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マダニ咬傷~小児においても

2021.09.05

投稿者
クミタス

マダニの多くは春から秋(3~11月)にかけて活動が活発になり、ウイルスを保有しているマダニに咬まれることで感染症を発症するリスクがあり、 マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群 (Sever fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)を発症する場合があります。
またマダニに咬まれることでマダニの唾液腺に含まれるα-gal(タンパク質上に存在する糖鎖)などがヒトの体内に取り込まれ抗体ができ、牛肉、豚肉、羊肉、カレイ魚卵などを摂食しアレルギー反応を示すことがあります。

マダニによる重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)では、成人のほうが白血球数の減少が顕著で症状が重い傾向も見られていますが、発症ケースは多くはないものの、小児においても重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)を発症することもあります。

生来健康の5歳女児。近くの山に出かけ、4日後に左耳介後部のリンパ節腫脹が出現し、翌日には37℃後半の発熱、後日母が児の頭頂部にダニが付着しているのを発見した。ダニは自然に皮膚から脱落したが、近医でダニ刺咬部周囲を切開された。帰宅後より39℃の発熱が翌日も持続したため、ダニ媒介性感染症を疑われ入院した。入院時、体温38.7℃、心拍数、呼吸数も増加していたが、全身状態は良好。両側の眼球結膜充血、左耳介後部に軽度の熱感を伴う圧痛が著明な1.5cm大のリンパ節腫脹が認められ、ダニ刺咬部の発赤、腫脹はなかった。入院時の血液検査では白血球数、血小板数は正常、生化学検査では血清AST値、LDH値の軽度上昇が認められた。発熱後、2回嘔吐したが入院後の嘔吐はなく、発熱と眼球結膜の充血以外に症状を認めず、輸液のみで経過観察された。入院3日目に腹痛が出現したが、症状は数時間で消失し、嘔気や嘔吐、下痢はなかった。入院時には血球減少を認めなかったが、同日の血液検査では白血球数2,300/μl、血小板数10.9×104/μlと減少していた。血液検査でSFTSV遺伝子陽性であることが判明し、SFTSと診断された。無治療で入院5日目には解熱し、以後再発熱はなく入院8日目に退院した。

マダニを引っぱって抜こうとして、部位にマダニの一部が残り、皮膚の炎症やしこりができるなど、肉芽腫や膿瘍、難治性潰瘍の原因となることがあります。

3歳女児。右耳介後部をマダニに刺咬され、父親によって虫体は除去されたが、同部に肉芽腫を形成した。全身麻酔下で病変部を一塊として全摘除された。切除標本の臨床病理検査では真皮内に結節状に炎症細胞浸潤が認められ、結節中央~先端部にモグラドリル様のマダニ口器が組織内に深く食込んで残存していた。

1歳5ヵ月男児。数日前に家畜飼育センターでヤギやウサギ、ニワトリを見学し数時間過ごしていたが、右後頭部にできた半米粒大の小結節に8本足を認め、マダニ刺咬症と診断された。局所麻酔下で虫体を皮膚とともに亜全摘され、虫体はヒトツトゲマダニ雌成虫と同定され、数日後、旗ずり法でヤギ小屋付近のマダニ生息調査がおこなわれたところ、山際2ヶ所からフタトゲチマダニ若虫とヒゲナガチマダニ雄が採取された。

山畑での農作業や野山への遠足時にマダニと遭遇する場合があり、特に鹿やイノシシ、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどが生息していたり飼育されている場所に近づいた後で、異変があった場合はマダニやダニに咬まれたことが原因となっている可能性も踏まえられると良いかもしれません。


出典・参照:
廣谷太一 福島大 美並輝也 鈴木勇人 下竹孝志 マダニ刺咬症による異物肉芽腫の幼児例
前田学 角坂照貴 新生会八幡病院皮膚科 マダニ刺咬症の幼児例と咬着場所でのマダニ生息調査
本邦初の重症熱性血小板減少症候群と診断された小児例

血清アルブミンによるアレルギー①
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/4653
マダニ咬傷によるアレルギー
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/3883
豚肉によるアレルギー~Pork-cat syndrome、マダニ
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2078

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