Author クミタスさん
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2026.09.01
家庭内にある化学製品でも、混合・加熱・長期放置などの条件が重なると毒性が変化し、有毒ガスや強腐食性物質が発生して致死的な中毒に至る場合があります。
今回は、長期間放置された農薬が化学的に分解し、硫化水素を発生させたケースについて掲載します。
症例は80歳男性。自宅台所で内容不明の褐色の小瓶5本を見つけ,廃棄のため開栓したところ刺激臭のあるガスが噴出し失神した。家族が駆けつけると痙攣しており救急要請した。10分後救急隊現着時,傷病者の意識は回復しており自力歩行可能であった。傷病者からは硫黄臭がした。室内に硫黄臭はなかったが硫化水素中毒を疑い傷病者を搬送。病院着後脱衣,除染を行い救急外来に搬入した。
傷病者は意識清明であり,事故当初のことも覚えていた。硫化水素中毒に準じ肺水腫等の発生を考え経過観察入院とした。第2病日の胸部レントゲン写真,血液検査等でも問題なく,第3病日に軽快退院となった。小瓶の分析を科学捜査研究所が行った。5瓶ともに内容は古い農薬であり,瓶のラベルは変色していたが内容物のサプロール(殺菌剤),スリトーン(成長抑制剤)等が判読できた。発生したガスを分析したところ硫化水素とイミダゾリジンチオンが検出された。カーバメート系殺虫剤が長期放置され経年変化によりイミダゾリジンチオンに分解,酸化され,硫黄基を含むこれがさらに分解され,硫化水素が発生したと考えられた。
長期に農薬を放置すると,保管の状況によっては硫化水素等の中毒物質が発生することもあり,市民には長期保管しないことを喚起することが必要である。また救急の現場においては中毒物質による意識障害にも注意して傷病者への接触を図ることが2次災害防止の観点からも重要である (出典・参照:福田靖, 吉岡勇気, 加藤道久 長期放置された農薬瓶に発生した硫化水素の1例)。
農薬が経年劣化し硫化水素を発生させた事例であり、家庭内でも化学製品が有毒ガスを生成して急性中毒を引き起こす可能性を示唆しています。硫化水素は洗剤の混合や排水口の腐敗といった日常的な状況から突然生成されることがあります。酸性洗剤と塩素系漂白剤を誤って混ぜると、化学反応により硫化水素や塩素ガスが急速に発生し、密閉空間では数秒で意識消失に至る濃度に達することがあります。また、排水口や下水の腐敗によって硫黄化合物が分解され、硫化水素が自然発生するケースもあり、換気の悪い浴室やトイレでは高濃度に蓄積する危険があります。硫化水素は無色で、高濃度になると嗅覚が麻痺し、特有の“腐った卵臭”を感じとれなくなるため、危険に気付きにくい点も注意が必要です。
他にも、一酸化炭素は給湯器の不完全燃焼や車庫でのエンジン始動で生じ、塩素ガスは酸性洗剤と漂白剤の混合で発生し、呼吸困難や肺水腫を引き起こすことがあります。別途掲載したいと思います。
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