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歯根管治療によるアレルギー、アナフィラキシー

2019.04.02

投稿者
クミタス

歯科治療に使用する局所麻酔薬、ラテックス手袋、鎮痛・抗炎症剤、また歯科金属などによりアレルギー症状が出現することがありますが、歯根管治療によりアレルギー、アナフィラキシーを起こすこともあります。
歯科での歯根管治療は広くおこなわれていますが、パラホルムアルデヒド含有歯根管治療剤による即時型アレルギーは全身症状を呈する例も多く、発症までに時間がかかる場合があるとの示唆もなされています。また皮膚プリックテストでは陰性となる傾向もみられています。

49歳女性。これまでに感冒薬服 用後や抜歯処置後などに発熱、下痢、嘔吐、じんましんなどの症状、ホルムアルデヒド製剤の1つでホルマリンクレゾールを用いた根管治療後に軽度の発疹を自覚したことがあった。
歯性歯髄炎の治療にて、パラホルムアルデヒド製剤の貼薬処置と酸化亜鉛ユージノールセメントによる仮封処置がおこなわれた約3時間後、四肢の発赤と腹部の掻痒感が発現したため、近医内科にて点滴処置を受けた。
翌日歯科にて再度パラホルムアルデヒド製剤の貼薬処置を受けたところ同日夜より咳、呼吸苦、嚥下痛などの全身症状が出現し、発赤も顔面まで波及。症状が改善しないため同歯科にて根管治療薬を除去した後、別院に紹介受診。38℃の発熱、全身の掻痒感、顔面、四肢、体幹に紅斑等があり、咳、呼吸困難、嚥下痛、嘔気、著明な両眼瞼の腫脹、口腔粘膜全体に発赤、びらんが認められ、即日入院後マルトース加乳酸リンゲル液、ヒドロコルチゾン300mg/dayの点滴静注により、同日夜には発熱、全身の紅斑、掻痒感、嚥下痛などの症状は軽減。入院翌日の昼頃には全身の紅斑をはじめ、その他の症状も改善したため退院となった。
その後の検査でホルムアルデヒドに対するIgE-RASTでclass5、パラホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド含有薬剤で陽性を示し、根管治療薬中に含まれるパラホルムアルデヒドに対するアレルギーと診断された(出典・参照:根管治療薬(パラホルムアルデヒド製剤)によって惹起されたアナフィラキシーの1例)。

73歳女性で歯科にて急性化膿性歯髄炎の診断で局所麻酔下に抜髄を施行した5時間後に手足の紅斑、瘙痒が出現。その後も根管治療を受けた際に、毎回軽度の気分不良が出現していた。6回目の治療の4時間半後に、腹部に紅斑が出現、水溶性プレドニゾロン30mgが投与されたが紅斑は背部、大腿に拡大し、血圧が一時測定不能となった。
後日、歯科初診時と2回目以降の治療で共通して使用していたホルムアルデヒドを被疑薬としてのプリックテストにて陽性、ホルマリン特異的IgEはclass 4 (Index36.90UA/ml) と陽性であり、歯根管治療に含まれるホルムアルデヒドによる即時型アレルギーと診断された(出典・参照:ホルムアルデヒド含有歯根管治療剤による即時型アレルギー)。

32歳女性。歯髄炎にてリドカインによる局所麻酔下に抜髄処置後、パラホルムアルデヒド含有歯根管治療剤を充填された。歯科治療1時間後に痛み止めとしてアセトアミノフェンを内服した。歯科治療4時間半後に全身の膨疹、呼吸苦が出現し、近医へ緊急搬送され、アナフィラキシーショックの診断で、ヒドロコルチゾン、d-クロルフェニラミンの投与により、順次呼吸苦、膨疹は改善。後日の皮内テストを経てパラホルムアルデヒドによる即時型アレルギーと診断された(出典・参照:パラホルムアルデヒド含有歯根管治療剤によるアナフィラキシーショックの1例)

ほかにもパラホルムアルデヒド含有歯根管治療剤が原因とみられる24歳女性、23歳女性での歯科治療8時間後、30分後での全身の膨疹出現例などが報告されています。使用量や状態にも依りますが、ホルムアルデヒドが徐々に遊離、溶出されることが影響する可能性についての示唆もあり、パラホルムアルデヒド製剤によるアレルギー、アナフィラキシー例においては、歯科治療後数時間を経過してからの発症、中には10時間以上経過してからの発症例も見られています。
過去において歯根管治療後、その翌日などにも体調不良、発疹などがあった場合は、次回歯根管治療の前に、その旨を伝え内容や対応について相談ができると望ましいでしょう。

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