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多発性硬化症と食物アレルギー

2019.03.01

投稿者
クミタス

多発性硬化症は20~30歳代で発症する人が多く、比較的女性の患者さんが多くみられる中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患で、脳の情報伝達の役割を果たす軸索を覆うミエリンが障害を受け脱髄されることで、脳の情報伝達がスムーズにおこなえなくなり様々な症状が出現し、再発を繰り返すともみられています。
脱髄する原因として、自己免疫が関与している可能性が考えられていますが、食物アレルギーのある多発性硬化症の患者さんにおいて、再発数増、ガドリニウム増強病変増の可能性も報告されています。

米国ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院で多発性硬化症の縦断的総合調査(CLIMB)研究に登録された1349人の患者さんを対象に、アンケート回答により確認した環境アレルギー、食物アレルギー、薬物アレルギーの有無と、臨床的(発作数、拡大障害状態尺度(EDSS)、多発性硬化症重症度スコア(MSSS))および放射線学的変数(ガドリニウム増強病変の存在、病変数)を評価したところ、
食物アレルギーのある群(238人)はアレルギーのない群(427人)と比較して再発の累積回数が1.38倍高く(P = 0.0062)、性別、発症年齢、および疾患分類などの潜在的な交絡因子について調整された場合でも有意なままであった(再発率比1.27、P = 0.0305)。また食物アレルギーのある群は、MRIでガドリニウム増強病変を有する可能性が2倍以上(OR 2.53、P = 0.0096)を示した。一方、環境アレルギーのある群および薬物アレルギー群は、アレルギーのない群と比較して有意な差を示さず、拡大障害状態尺度と多発性硬化症重症度スコアは食物アレルギー、環境アレルギー、薬剤アレルギー有の影響を受けなかった(Food allergies are associated with increased disease activity in multiple sclerosis)。

多発性硬化症と様々な自己免疫疾患との関連は考えられるところですが、アレルギーの中でも食物アレルギーに関連するメカニズムは、多発性硬化症患者さんの再発率と炎症活動を増加させる可能性が伺えるところでもあります。
多発性硬化症患者さんの腸内細菌叢においては、多発性硬化症でない方の腸内細菌叢と比べ違いが見られるとの報告もみられていますが、食物アレルギーは腸内細菌叢変化に関与し、腸内細菌が神経伝達物質に直接的に影響し、中枢神経系に影響する可能性も考えられます。

最近、抗アレルギー薬の第一世代抗ヒスタミン薬クレマスチンフマル酸塩(クレマスチン)が多発性硬化症の脱髄性視神経症の治療に有効であることを示唆する試験結果や、慢性脱髄性損傷の治療として長期的損傷後もミエリン修復可能性を示唆する報告もなされていますが、ウイルスなどの感染予防とともに食物アレルギーのある多発性硬化症患者さんにおいては、食物アレルギーを良い状態に保つことも多発性硬化症の状態維持の1つの策になり得るかもしれません。

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