成人喘息患者さんにおいては、吸入ステロイド薬がベースの治療薬となり、症状が落ち着いた、症状を感じなくなったなどの理由で自己判断で吸入ステロイド薬を中止、中断することは増悪、慢性化などのリスク懸念があり望ましくありませんが、吸入ステロイド薬を減量・中止できる場合とはどのような状態なのでしょうか?
吸入ステロイド薬減量後に症状悪化しないような減量基準とは?
吸入ステロイド薬で治療後、無症状期間6か月間以上の成人喘息患者さんにおいて、吸入ステロイド薬を半量に減量後、12か月~36か月の経過を追跡し、吸入ステロイド薬減量後に症状悪化しない因子を検討した解析では、
6施設233例、うち脱落を除く212例中12か月の経過では66例(31.1%)が平均6.1±3.3か月、36か月の経過では85例(40.1%)が平均9.5±7.5か月で悪化、
多変量解析から吸入ステロイド薬減量後も悪化しない指標として、12か月間の観察期間ではピークフロー値(PEF)週内変動低値、36か月間の観察期間では血清IL-33低値、減量前ピークフロー値(PEF)週内変動低値が有意な因子として抽出されたとし、
吸入ステロイド薬減量後に症状悪化しないような吸入ステロイド薬減量基準として、減量前のピークフロー値(PEF)週内変動、血清IL-33測定が有用な指標となる可能性を示唆しています。
出典・参考:成人喘息の長期管理における吸入ステロイド薬のStep downの指標に関する検討
国立病院機構相模原病院アレルギー科、国立病院機構岡山医療センター、国立病院機構南岡山医療センター、国立病院機構盛岡病院、国立病院機構東京病院、国立病院機構福岡病院
成人喘息患者さんにおける吸入ステロイド薬中止・減量例
成人の喘息患者さんにおいて吸入ステロイド薬を中止、減量した後の状態についての報告一例として以下があります。
3カ月以上コントロール良好で、吸入ステロイド薬の減量に同意した患者さんのうち、低用量ステロイド薬まで減量して、その後1年間の経過観察の後で吸入ステロイド薬を中止した患者さん26人(平均52歳)において、26人とも6か月後までの経過観察で増悪を認めなかった。鼻炎・副鼻腔炎を合併せず、喀痰症状が少なく、吸入ステロイド薬を低用量まで減量できたコントロール良好な喘息患者さんでは、ステロイド吸入薬の中止が可能と考えられる(出典:吸入ステロイド薬中止の可能性についての検討 2016 国立病院機構米子医療センター呼吸器内科 鳥取大学医学部 呼吸器・膠原病内科)。
適切な使用
成人患者さんにおいて、喘息症状(日中および夜間)なし、発作治療薬の使用なし、運動を含む活動制限なし、呼吸機能(FEV1及びPEF)が予測値あるいは自己最高値の80%以上、ピークフロー値(PEF)の日(週)内変動20%未満、憎悪(予定外受診、救急受診、入院)なしの状態が3~6か月持続している中で、医師判断のもとステップダウンが考慮されるようになります。
一方で喘息患者さんの中には、自然寛解しているケース、喘息と他疾患との見分けがつきにくく診断が正しくおこなわれていなかったと考えられるケース可能性などもあります(カナダでの調査になりますが、喘息と診断された平均年齢51歳の患者さん613中33.1%で現在喘息であることが否定され、2.0%は心臓性病態の誤診であり、29.5%は評価後12か月の追跡でも喘息エビデンスがなかったと報告)。
症状が落ち着いていても喘息治療が必要な状態においては継続治療を、コントロール良好の場合においてはステップダウンを視野に、また投薬が必要な場合においては、適切な操作方法による吸入等にて副反応は少なく最大限効果が発揮できる状態で使用できるようにすることも望ましいところでもあります。
また、他報告なども含め、お送りしたいと思います。
参考:Reevaluation of Diagnosis in Adults With Physician-Diagnosed Asthma
Shawn D. Aaron, et. al.; for the Canadian Respiratory Research Network
JAMA. 2017;317(3):269-279. doi:10.1001/jama.2016.19627
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