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酪酸とアレルギー、疾患との関連可能性

2020.03.06

投稿者
クミタス

乳幼児における腸内細菌の違い①
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2987
では、出生時、発育時の環境による腸内細菌の違いについて掲載しておりますが、今回は腸内細菌の中でも酪酸菌とアレルギー、疾患との関連可能性についてお送りします。

食物繊維が多い食事により腸内細菌の活動が高まり、代謝産物のひとつである短鎖脂肪酸の酪酸の生産量が増加すると、大腸粘膜局所においてナイーブT細胞から制御性T細胞(Treg)への分化が誘導され、炎症を抑制する可能性が考えられており、また酪酸などの短鎖脂肪酸が増加すると、脂肪酸受容体であるGPR41が活性化され、炎症部位での好酸球が減少し、炎症が軽減し、マウスでは低繊維食ではアレルギー性気道疾患が増加した、などの報告もあります。

最近の報告では、①アレルゲンに感作している子供の3か月時の腸内細菌においては、酪酸産生能が遺伝的に減弱しており、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を分解する炭水化物活性酵素(CAZymes)をコードする遺伝子に欠陥が見つかった、また②85名の小児(鼻炎27名、喘息34名、対照24名)を対象にした糞便中の代謝産物や腸内細菌叢において、鼻炎(P = 0.029)と喘息(P = 0.009)の子供では、ヒスチジンと酪酸の代謝産物のレベルが著しく低下しており、喘息の子供ではフィーカリバクテリウム属菌、ロゼブリア属菌を含む酪酸産生菌が減少し、クロストリジウム属菌が増加。便中の酪酸量が少ないと、ダニ特異的IgEレベルや小児期の喘息発症リスクが増加する可能性がある、との報告もなされています。

ほかに酪酸と疾患との関連に関しては、以下などの示唆があります。
・糖尿病患者さんの腸内細菌叢では酪酸産生菌が減少している傾向
(2型糖尿病患者さんに関する示唆、1~5歳の1型糖尿病患者さん27例での調査)
・腸管内の酪酸産生量の減少⇒Treg の分化誘導を低下⇒炎症性腸疾患(IBD)の発症に寄与している可能性

酪酸、酢酸などの短鎖脂肪酸を産生する酪酸菌(宮入菌)が有効成分のミヤBM錠・細粒、酪酸菌配合剤のビオスリー配合錠・散などがあります。酪酸菌は芽胞を形成することで、抗菌薬投与時にも失活しにくいのでは、とも考えられています。最近の報告では、クルミを摂取していた方の糞便においては、フィーカリバクテリウム属、クロストリジウム属、ロゼブリア属の相対量が高かった、との結果も見られていますが、食物と酪酸についてもまた別途お送りしたいと思います。

出典・参照:①Reduced genetic potential for butyrate fermentation in the gut microbiome of infants who develop allergic sensitization
②Gut microbial-derived butyrate is inversely associated with IgE responses to allergens in childhood asthma
腸内細菌叢の異常とさまざまな小児疾患発症との関連
Walnuts impact gut microbiome and improve health

腸内細菌叢と炎症、アレルギー~制酸剤、抗菌薬
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2655

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