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ゆでたピーナッツとローストしたピーナッツでのアレルゲン性の違い

2018.06.23

投稿者
クミタス

​タンパク質は加熱、高圧処理などより変性し、抗原性にも影響を及ぼすことは知られていますが、ピーナッツにおいても加熱するとタンパク質が変化することがわかってきています。

ピーナッツのアレルゲンとしては以下が挙げられますが、中でも現在までにわかっている主要アレルゲンはAra h 2、またAra h 1、Ara h 3であり、熱耐性があります。
LTP:Ara h 9、Ara h 16、Ara h 17
2Sアルブミン:Ara h 2、Ara h 6、Ara h 7
7Sグロブリン:Ara h 1
11Sグロブリン:Ara h 3
PR-10:Ara h 8
プロフィリン:Ara h 5
オレオシン:Ara h 10、Ara h 11、Ara h 14、Ara h 15

タンパク質の溶出


ピーナッツのアレルゲンの中でも、水溶性タンパク質は茹でることで、茹で汁に溶出し、ピーナッツ自体に含有する水溶性タンパク質量が低減し得る面があります。
上記にも記載の2SアルブミンのAra h 2、そしてAra h 6、Ara h 7は水溶性タンパク質になりますが、密閉容器で6時間沸騰させるなどの処理により、Ara h 2、Ara h 6、Ara h 7が低減したとの調査結果も見られています。

タンパク質の構造変化


100°C前後での加熱による茹でる調理よりも、乾燥した中での高温処理になるローストした(焙煎した)ピーナッツにおいては、水にタンパク質が溶出することがなく、アレルゲンによってはIgE結合性が高くなるとの示唆もあります。
Ara h 2 にはα-アミラーゼ/トリプシンインヒビター活性がありますが、ローストすることにより、Ara h 2 の中で変化し、トリプシンインヒビター活性が増強すると考えられています。トリプシンインヒビター活性が増強するとタンパク質の消化性が悪くなりますが、Ara h 1の消化を阻害し、さらにアレルギー性を高めるとも見られています。
熱処理による構造変化、メイラード反応や糖化反応の関与などにより、加工の違いから、消化性、アレルゲン性に違いがうまれる可能性があります。

ローストしたピーナッツに、高温高圧処理をおこなうと(オートクレーブ処理:内部を飽和蒸気によって高温高圧にする)、タンパク質内部に水分子が侵入してランダムコイルの状態となり、IgE反応性が低下するとの示唆もあります。アレルギー症状のある方の反応するアレルゲンが加工によってもアレルゲン性が低くなっている場合は、摂取可能量に影響する場合もあります。
Ara h 2、Ara h 1においては、ローストピーナッツよりも茹でピーナッツの方がアレルゲン性が低い可能性があるとの示唆が見られていますが、茹でピーナッツにおいてもどの程度の加熱でどの程度低減するかなど、またアップデートしていきたいと思います。


出典・参照:The major peanut allergen, Ara h 2, functions as a trypsin inhibitor, and roasting enhances this function.
Effects of cooking methods on peanut allergenicity.
Loss of allergenic proteins during boiling explains tolerance to boiled peanut in peanut allergy
Sequential hypoallergenic boiled peanut and roasted peanut oral immunotherapy
Comparison of the Digestibility of the Major Peanut Allergens in Thermally Processed Peanuts and in Pure Form
Heat and pressure treatments effects on peanut allergenicity

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