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保湿に関与する成分とアトピー性皮膚炎

2018.06.09

投稿者
クミタス

バリア機能と保湿機能


皮膚角層においては、皮膚からの水分の蒸散を防ぎ、物理的・化学的刺激から皮膚を守るバリア機能と水分を保持して肌のうるおいを保つ保湿機能があります。
フィラグリンはケラチンとともに角層を形成する主要なタンパク質であり、皮膚からの水分の蒸散を防ぐ面があります。そしてフィラグリンは分解されてアミノ酸、ウロカニン酸などが産生され、天然保湿因子(NMF)の1つとなり、角層中で水を結合させる作用があります。ほかにも細胞間脂質、毛嚢から分泌された皮脂、汗由来の乳酸や尿素、表皮で産生されたヒアルロン酸も角層の保湿に関わります。

皮膚においては、セラミドなどの角質細胞間脂質の配列、皮脂膜の状態、天然保湿因子(NMF ; Natural Moisturizing Factor)の充足程度、角質剥離酵素の働き、pHバランスなどが正常であることなどで、健康な状態を保たれる面がありますが、アトピー性皮膚炎の方においては、健康な状態を保ちにくい状態であることがあります。

アトピー性皮膚炎の方での傾向可能性


アトピー性皮膚炎の方の中には、フィラグリン遺伝子異常がある方もいらっしゃることが知られていますが、フィラグリン遺伝子異常により、皮膚からの水分蒸散が多く、天然保湿因子が少なく、皮膚バリア機能が低下しやすくなる面があると考えられています。
最近では、フィラグリン・ペプチドから天然保湿因子(NMF)の産生に、ブレオマイシン水解酵素が関わっていることがわかってきていますが、ブレオマイシン水解酵素の活性と遊離アミノ酸量、経皮水分蒸散量 (TEWL) の間には相関があり、アトピー性皮膚炎の皮疹部また無疹部においてもブレオマイシン水解酵素が極度に低下していたとの示唆もなされています。

アトピー性皮膚炎の患者さんにおいては発汗量が少ない方も少なくなく、発汗異常は炎症性皮膚疾患の発症因子となることがありますが、保湿剤に比べ保護剤であるワセリン、またステロイド軟膏は、発汗を促しにくい面もあります。

皮膚を慢性的に掻かないようにする、発汗による保湿、保湿外用薬の使用などにより状態悪化をくい止めることにもつながり得ます。今回は主にフィラグリンの観点でお送りしましたが、秋に生まれた方は春に生まれた方に比べ湿疹のリスクが増加するとの誕生時の季節との関連を示唆する報告などもあり、また改めて他の観点でもお送りしたいと思います。以下でも一部記しておりますので、ご参照ください。

発汗への影響~ステロイド剤、保湿剤、ワセリン
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2181
アレルギー性疾患発症とDNAメチル化、誕生時の季節との関係
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1316
保湿について~症状再燃予防のためにも
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2090
皮膚バリア機能の低下要因とは?
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1828

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