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卵殻が原料のグラウンド用白線粉が原因と考えられるアナフィラキシー

2020.09.02

投稿者
クミタス

運動場でのスポーツ競技、運動会などでのライン引きに使用する白い粉には、石灰(せっかい)、石灰(いしばい)、ラインパウダー、グラウンド用白線粉などの呼称があります。グラウンド用白線粉においては、多くの学校で使用されていた強いアルカリ性の消石灰(水酸化カルシウム)から、眼や皮膚の熱傷リスクがより低い炭酸カルシウムなどを使用するよう、平成19年10月に社団法人日本眼科医会から文部科学省に要望書が提出され、11月に文部科学省から「運動場のラインなどに使用する石灰の取り扱いについて」の通知が出された経緯があります。
現在、石灰石、卵殻、貝殻を原料とした製品などがありますが、卵殻が原料のグラウンド用白線粉を接触、吸入したことによるアナフィラキシーと考えられる小児例も見られています。

卵アレルギー、アトピー性皮膚炎の既往がある6歳男児。
運動会の練習中、白線がついた手で顔をこすった後、蕁麻疹、咳が出現した。
原因に卵殻を含有するグラウンド用白線粉を考え、母の判断で両上下肢、後頸部に白線を再度接触させた。接触5分以内に喘鳴と呼吸苦、接触した部位と顔面に発赤、蕁麻疹を認めたため、抗ヒスタミン薬を内服し、受診。
受診時(内服後約1時間)、皮膚症状と呼吸苦は消失していたが、聴診で呼気終末に喘鳴を聴取した。経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は100%であり、経過観察とされた。
当該製品の性状解析を行った結果、卵白の主要アレルゲンの1つであるオボアルブミン濃度は20μg/g以上、粒子径は0.5~1000μmの範囲で分布、約10%は5μm以下であった。
以上から、当該製品が接触抗原および吸入抗原となり、ほぼ同時に経皮および経気道的に吸収・吸入されたことで即時型アレルギー反応を呈し、アナフィラキシーの定義を満たしたと考えられた(出典・参照:五十嵐 瑞穂, 鈴木 大地, 秋山 聡香, 小花 奈都子, 川口 隆弘, 林 健太, 大場 邦弘, 卵殻を含有するグラウンド用白線粉によるアナフィラキシーの小児例 日本小児アレルギー学会誌, 2020, 34 巻, 3 号, p. 366-369)。

卵殻が原料の卵殻カルシウムのグラウンド用白線粉に卵殻膜などに含まれるタンパク質が一定量以上残留している場合、手に付いた状態で眼をこすり粘膜経由で、皮膚経由で、また吸い込んで気道経由などで卵のアレルギー症状が出現する場合があります。卵にアレルギー症状のある方のすべてにおいて、卵殻が原料のグラウンド用白線粉に症状出現するとは限りませんが、症状出現可能性に留意のうえ、石灰石が原料の炭酸カルシウム、 水でラインを引くウォーターペン、ラインテープ、ラインロープなどもありますので、選択肢として検討できると良いかもしれません。

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