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米粉パンを膨らみよくするには

2016.11.21

投稿者
クミタス

自家製パンは生地の水分量や焼時間を調整していないと固くなりやすい面がありますが、米粉でつくるパンは小麦でつくるパンよりもより固くなりやすい傾向にあります。適した米粉の特性についてお送りした前編に続き、後編では米粉パンづくりにおける対策例についてお送りします。

前編:自家製米粉パンが硬くなるのはなぜ?
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1735

まずは米粉、材料に配慮


米粉パンにおいて、加熱後にも二酸化炭素が気泡として生地中に保持できれば、ふくらみが良くなります。
小麦のパンではグルテンが気泡を保持する役割を果たしますが、米粉パンにおいては、気泡を保持する状態の生地にする必要があります。

米粉、砂糖、塩、酵母、温水、水、オイルで膨らみのよいパン作りは可能ですが、使用する米粉をはじめ、材料、条件などに配慮する必要があります。

まずパンの出来に大きく影響する米粉については、でんぷん損傷の少ない、中~やや高アミロース米の米粉を選択するようにします。

パンづくりに向いている米粉例
・ミズホチカラ
・あきまさり
・モミロマン
・シルキースノウ(米をアルカリ溶液中で石臼製粉)

製粉方法によってでんぷん損傷度合が変わりますが、損傷度合の比較的少ない米粉は米を水に浸漬した後で水と一緒に粉砕する水挽粉砕、湿式気流粉砕等の方法が取られています。

オイルについては、米粉と米粉の1/4量小麦グルテンを使用し焼成したパンでのテストになりますが、
キャノーラ油(菜種油)>サラダ油>マーガリン>紅花油>バター>オリーブオイル=米油
の順で比容積が高いとの調査結果もあります。
オイルの精製程度によっても異なり、あくまで参考情報ではありますが、オイル選択、量も考慮できると良いでしょう。

参考:油脂および澱粉が米粉パンの製パン性に及ぼす影響

α化米を加える


ごはん、おかゆは米が糊化した状態であり、糊化した米(α化米)を生地に加えることで、加熱時にも気泡を保持できやすくなり、ふくらみがよく、やわらかい仕上がりになる場合があります。

小麦粉使用生地にササニシキなどの中アミロース米を炊いたごはんを全体の15%量分ほど置き換えて使用するようにすると膨張性が高まり、やわらかい食感になる傾向があります。

α化米の粉末が加えられた米粉に、マイベイクフラワーがあり、マイベイクフラワー、砂糖、塩、酵母、温水、水、オイルでパン作りが可能です(新米あきたこまちのマイベイクフラワーの場合、水分量を少し少な目に調整するのが望ましいです)。

参考:粥状の糊化処理した米を添加したパンの粘弾性および気泡構造
アミロース含量の異なる米粥のパンの物性へ及ぼす影響

でんぷんを添加


・加工でんぷん
でんぷんにはコーンスターチ、タピオカでんぷん、馬鈴薯でんぷんなどが挙げられます。でんぷんの添加は、加熱中の生地の気泡を保持し固定化することが目的となりますが、でんぷんによってはさらに比容積が低く、硬いパンに仕上がります。でんぷんによっても性質が異なり、小麦でんぷんはでんぷん表面が親油性で、油球に多量のデンプンが吸着します。
でん粉の中でも老化しにくいでん粉として、キャッサバ(タピオカ)でん粉が挙げられ、焼成後のパン硬化を抑えられ得る点は有用ではありますが、タピオカでんぷん、またほかのでんぷんにおいてもリン酸架橋酵素処理、またはアセチル化リン酸架橋酵素処理がなされた加工でんぷんにおいて膨らみの向上につながります。
加工でんぷん入りの米粉のパンミックス粉を使用したり、​加工でんぷん入りの米粉のパンミックス粉を米粉に加えて焼成するのも1つの策となります。

・サツマイモ粉末
米粉に、米粉の1/3量のグルテンを加え焼成したパンと比較して、
米粉に8~12%分サツマイモ粉末に置換し加え焼成したパン、12~16%サトイモ粉末に置換し加え焼成したパンは、膨らみにおいてもそれほど違いはなく、焼成3日後の硬さにおいて、サトイモ粉末、ナガイモ粉末を使用した場合と比較してもサツマイモ粉末は硬さの進行度合が低かった、とのテスト結果もあります。
パン焼成中に、サツマイモ粉末中の耐熱性β-アミラーゼと米粉に内在するα-グルコシダーゼが効率的に作用し、マルトース、グルコースが生成されて生地内に保持され、またでんぷんのアミロース、アミロペクチンが一部分解されることで、でんぷんの再結晶による硬化が抑制されたのではとも考えられています。

出典:米粉パンの老化に及ぼすイモ類粉末の影響

増粘多糖類を添加


水を加えると粘性が高まる米粉の開発もなされていますが、市販の米粉パン、米粉パンミックス、米のめんには、米粉以外にキサンタンガム、グァーガム、アルギン酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)といった増粘多糖類、増粘剤が使用されている商品も多くあります。
増粘剤は、体積やテクスチャー、水分保持面での改善目的で使用されますが、米粉パンにおいては焼成24時間後、48時間後の硬さを抑える効果もあります。

プルラン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビンガム、コンニャクグルコマンナンの中では、プルラン以外で粘度が増し、コンニャクグルコマンナン使用パンにおいて比容積、テクスチャー面で最も高い評価とする報告もあります。

米粉にコンニャクグルコマンナンを加えてパンを焼成すると、不使用の生地と比べより低い温度から糊化を始め、また糊化が硬化する程度が低く、焼成後のパンにおいて、しっとり感が増し硬くなりにくくなる場合があります。
ほかにブロンドサイリウムの種皮から得られた多糖類を主成分とするサイリウムハスク(オオバコ)粉末、チアシード粉末、シトラスファイバーを使用する方法もあります。

参考:グルコマンナンの添加がグルテンフリー米粉パンの物性,食味及び老化に及ぼす影響
米粉パンの調製に及ぼす粒度と増粘多糖類添加の影響
グルテンフリー米粉パンの物性と食味に及ぼす絹フィブロインおよびキサンタンガムの影響

生地をねかせる


生地を発酵させる際、水の量が少なすぎてもきれいに膨張せずに亀裂が入ってしまったり(ひび割れは水分量だけが原因ではありませんが)、多すぎても生地がガスを保持しきれず膨張しないでもちのようなパンになってしまいます。
適した水分量は米粉の種類、乾燥状態によっても異なってきますが、米粉のでん粉損傷率が低く吸水量が多くない米粉であれば、生地をねかすことで、生地の組織構造が緩和されてガスを均一に保持し得るようになり、比容積は高くなり、きめが細かくテクスチャー面も向上し、焼き色も濃くなりやすくなります。

増粘剤を使用した場合においてもねかした方がより比容積は高くなり、焼き色も濃くなる傾向があり、合わせ技を取るのも有用です。

プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を使用


米粉パンにおいては、タンパク質含量が少ないほど膨化に適した加水量の幅が小さくなり、タンパク質含有量が多いほうが比容積が小さく硬いパンになりますが、焼成後の硬化を遅らせることが可能になります。

プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の使用、プロテアーゼを含む米麹を使用することにより、米粉のタンパク質を分解することで、ふくらみが向上した米粉パンづくりにも生かすことが可能にもなります。

米粉に水、プロテアーゼを加えるか米粉に米麹、プロテアーゼを加え
55℃で8時間、前醗酵をおこない
砂糖、塩、ドライイーストを加えてミキシングをし
38℃で35~50分二次発酵
160℃で30分焼成
にてふくらみが向上し焼成後の硬化が低く抑えられたとの報告もあります(湿式気流粉砕米粉を使用)。

出典:米麹を用いた100%米粉パンの新たな製法技術
麹等カビによる前醗酵工程を含む米粉パンの製法
米麹を用いた100%米粉パンの新たな製法技術

ほかに


水の替わりに豆乳を使用する、精製大豆タンパク質(グリシニン)を添加する、ペプチドであるグルタチオンを添加する、などほかにも考えられる方法は挙げられます。

他にも使用する酵母や、ホームベーカリーやオーブンの種類、焼成条件によっても出来上がりに影響し、上記対策例の中でも有効なもの、そうでもないものもあるかと思いますが、パン作りにおいては米粉選びに留意頂き、上記を1例にパン作りの参考にしていただければと思います。
ほかの方法についても更新していきます。


参考:グルテンフリー米粉パンの膨化に与える大豆タンパク質の影響
グルタチオンを利用したグルテンフリー米粉パンの製造基盤技術 ほか

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