入園、入学前にできるだけ食べられるようにしたい、と思われる方は多くいらっしゃるかと思いますが、年齢が進むにつれてどのくらいの方が耐性獲得するのでしょうか?
12歳時点での自然耐性状況は?
12歳時点での自然耐性状況を観察した報告があり、
・鶏卵
2002~2003年に出生し卵にアレルギー症状があるか、食物負荷試験で即時反応があり、6歳時点で耐性化していない(食物除去中の)154名のうち、追跡可能であった131名で、12歳時点では
77名が耐性獲得、29名が経口免疫療法を受けており、25名が除去継続中
・牛乳
2002~2003年に出生し牛乳にアレルギー症状があるか、食物負荷試験で即時反応があり、6歳時点で耐性化していない78名のうち、追跡可能であったのは67名で、12歳時点では
23名が耐性獲得、25名が経口免疫療法を受けており、19名が除去継続中
・小麦
2002~2003年に出生し小麦にアレルギー症状があるか、食物負荷試験で即時反応があり、6歳時点で耐性化していない27名のうち、追跡可能であったのは23名で、12歳時点では
10名が耐性獲得、10名が経口免疫療法を受けており、3名が除去継続中
・ピーナッツ
2002~2003年に出生しピーナッツにアレルギー症状があるか、食物負荷試験で即時反応があり、6歳時点で耐性化していない29名のうち、追跡可能であったのは24名で、12歳時点では
9名が耐性獲得、8名が経口免疫療法を受けており、7名が除去継続中
当該調査文献の中では、12歳時点で確認できている方に関してだけでも鶏卵では59%(耐性獲得者/追跡可能者)、牛乳では34%、小麦では43%、ピーナッツでは38%の方において、自然経過で除去解除できる状態になる可能性があることが伺える内容でもあります。
出展・参考:6歳時点で耐性獲得していない鶏卵アレルギー154名の12歳までの自然歴と耐性化因子
国立病院機構相模原病院小児科 国立病院機構相模原病院臨床センター
6歳時点で耐性獲得できていない牛乳アレルギー児78名の12歳までの自然歴と耐性化因子
国立病院機構相模原病院小児科 同臨床研究センター
6歳時点で耐性獲得していない小麦アレルギー児27名の12歳までの自然歴と耐性化因子
国立病院機構相模原病院小児科・臨床研究センター
6歳時点で耐性獲得していないピーナッツアレルギー児29名の12歳までの自然歴と耐性化因子
国立病院機構相模原病院小児科・臨床研究センターアレルギー性疾患研究部
急速免疫療法を実施した場合の摂取状況は?
急速免疫療法を実施した鶏卵、牛乳アレルギーの方において、その後の摂取状況を調べた報告によると
鶏卵での実施例:43例(登録時平均年齢7.4±1.9歳)
牛乳での実施例:32例(登録時平均年齢7.6±2.1歳)
鶏卵の維持3年目の摂取状況として
65%が加熱卵1個以上摂取可能
23%が加熱卵少量の摂取可能
11.6%が未到達
完全除去者はなし
牛乳の維持3年目の摂取状況として
25%が200ml以上摂取可能
6.2%が50~250ml摂取可能
6.2%が50ml未満摂取可能
62%が未到達
完全除去者は1名
アドレナリンを使用した方1名
とあり、摂取量を維持ができている方、到達できていない方も伺えますが、改めて完全除去となった方は限られることも伺えます。
出典:鶏卵、牛乳アレルギーに対する急速経口免疫療法の長期予後の検討
耐性獲得後の状況
6歳以降に鶏卵、牛乳、小麦の急速・緩徐法による経口免疫療法の開始後2年以内に目標量到達後3カ月間無症状を条件におこなう確認試験(2週間完全除去後の経口負荷試験)が陰性であった方で、1年以上経過した方(130例)を対象にした調査にはなりますが、
130例のうち回答を得られた108例の中では、
1年以内 7例、1~2年 5例、2年以降 13例
で症状出現があり、中等症以上の症状誘発は24例に見られたとあります。除去解除後のアレルギー症状誘発においては、14例において運動が因子と考えられ、アドレナリン投与は2例。
一方、83例(77%)では食物除去解除後、症状誘発は確認しておらず、学校給食のある76例中49例で除去解除ができていたとあります(経口免疫療法 開始年齢:8.4歳(中央値)、実施期間:0.8年)。
出典:経口免疫療法を受け2年以内に確認試験で陰性を確認した児のその後の臨床経過
国立病院機構相模原病院小児科 同臨床研究センター
小麦アレルギーを合併している鶏卵アレルギーの急速経口免疫療法中に気管支喘息が悪化した7歳男児に、オマリズマブを投与し、急速法退院から5か月時に維持量に到達、オマリズマブを投与後の症状出現頻度も減少、13か月時に10日間の除去のうえ, 鶏卵1個を無症状で食べられることを確認した、
との報告もあります。
経口負荷試験が陰性となった後に、当該食物摂取+運動により症状出現する場合や、摂取可能量が一時期よりも減少することもあり、また継続的に摂取する負担もありますが、微量の混入等でのアナフィラキシーリスクを低減する可能性はあります。
まずはどの程度食べられるのか、食物負荷試験にて確認されつつ、食べられるようにしていきたい、食べられる量を増やしたいなど目標をお持ちの場合は、食物負荷試験を実施の病院やかかりつけの病院等で経口免疫療法等について相談されるか、紹介不要の病院であればお問合せされるのが良いでしょう。
出典:鶏卵アレルギーの急速経口免疫療法中にオマリズマブを投与した1例
国立病院機構相模原病院小児科、国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部
食物依存性運動誘発アナフィラキシーについて
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/765
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