ジュニアシートを使用していた3歳女児が,自家用車での追突事故後に外傷性小腸穿孔を来した事例について掲載します。
養父運転の自家用車で40 km/h走行中、本児に話しかけられて前方不注意となり、停車中の車に追突した。ブレーキをかけたが間に合わず、エアバッグが作動し、フロントガラスの損傷は無かったが、車体前方部中央が20 cmほど凹んだ。本児は右側後部座席でジュニアシートを使用していた。事故直後は意識清明で啼泣あり、疼痛の訴えや、明らかな頭部打撲の所見は無かったため、救急要請は行われなかった。しかし、事故の10分後より傾眠傾向となり、食物残渣を2回嘔吐し、腹痛を訴えた。近医へ受診を試みたが受け入れ困難であり、X日午後0時頃(受傷後4時間)A医療機関を自家用車で受診した。養父に外傷は認めなかった。
受診時、意識レベルはJCSⅡ-10で、気道閉塞や努力呼吸は認めず、心拍数150回/分、血圧100/80 mmHg、SpO2 98%であった。左上腹部、右側胸部、右鼠径部にシートベルト痕を認めた。腹部は軽度膨満し、腹膜刺激徴候は認めなかったが、全体に圧痛を認めた。腹部超音波検査ではFAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)は陰性で、実質臓器損傷は認めなかったが,上腹部小腸に軽度浮腫と腸管間隙に少量の腹水を認め、血液検査では白血球数18,800/μLと上昇、ASTは46 U/Lと軽度高値であった。Dダイマーは18.6 μg/mLと高値であったが、CRPは0.03 mg/dLであり,その他の検査値に明らかな異常は認めなかった。初期輸液後、頻脈は改善傾向となり、経過観察目的に入院とし、絶飲食管理とした。受傷後12時間頃より38℃台の発熱を認め、翌朝にかけて腹痛および腹部膨満が増強。腹部超音波検査で腹水増加と腸管拡張像を認めたため,受傷後24時間で造影CTを施行した。臍やや頭側レベルで椎体左前面の小腸に壁肥厚と口径差を認め、同部に接して腸管外液体貯留およびfree airを認めた。外傷性腸管穿孔と診断し、緊急手術を施行した。上腹部5 cmの横切開で開腹すると混濁腹水を認め、Treitz靭帯より約70 cm肛門側の小腸に穿孔を認めた。腸間膜損傷はなく、小腸単発損傷であったため,穿孔部を含め小腸切除吻合を行い、左横隔膜下およびDouglas窩にドレーンを留置。診断は外傷性小腸穿孔であった。術後の経過は良好で,周術期の合併症はなく、自宅退院となった(入院期間11日,一般床)。後遺症は認めなかった。主治医の推測では体幹部のシートベルト痕の分布から、肩ベルトが腋窩を通過していた可能性が考えられたが,事故当時の詳細な装着状況は確認できなかった。なお乗車時には養父は適正な方法でジュニアシートのシートベルトを装着し,本人の体勢はずれていなかったとのことであった。乗車後に本人が肩ベルトの上に腕を出してしまった可能性が推測される(出典・参照:Injury Alert(傷害速報)No. 156 ジュニアシート肩ベルトの位置不備(腋窩下通過)による外傷性腸管穿孔)。
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