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市販のかゆみ止めクリームを誤食したことによる影響

2023.02.03

投稿者
クミタス

誤飲、誤嚥、誤食においては薬剤での例も挙げられますが、外皮剤を誤食することもあり、場合により重篤な症状に至る場合もあります。

認知症のある86歳男性が、夕食後の20時頃、家族が目を離した隙に市販のかゆみ止めクリームをスプーンで食べてしまった。20時43分に救急外来を受診した。持参したクリームは1壺が150g入り で、3分の2ほどなくなっていたことから、およそ100g誤食したと推定された。受診時はとくに症状を訴えず、身体所見、採血、心電図、胸部X 線に異常はなかったが、経過観察入院とした。誤食2時間30分後から血圧が207/144mmHgと上昇し、その15分後に嘔吐し、その後急速に意識レベルが刺激をしても覚醒しない状態(痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめるJapan Coma Scale(JCS)200)へと悪化した。第2病日には意識レベルの改善がみられ、誤食12時間後には刺激しないでも 覚醒している状態(自分の名前、生年月日がいえないJCS 3)まで改善した。誤嚥性肺炎を合併したため抗菌薬投与を開始。第3病日には意識レベルは以前の状態に回復した。その後経過良好で第12病日に退院した。かゆみ止めクリームに含まれるジフェンヒドラミン、カンフル、リドカインはそれぞれ致死量または中毒量であり、患者背景から気管挿管をしないなど治療制限があったが、患者は一命を取りとめた(出典・参照:井上卓也   安田祐真  中村元気   守田裕啓   林浩之   尾崎 将之   ジフェンヒドラミン,カンフル,リドカイン含有かゆみ止めクリーム誤食による急性中毒の1例)。

同じ製剤(メンタームEXプラス150g)での誤食による他報告もあり、同製剤を最大50g誤食して意識障害、痙攣、誤嚥性肺炎を認めた95歳男性においては発見時すでに意識障害があり、誤食した時間は不明ですが、胃洗浄、活性炭・下剤投与が行われ,翌日意識障害は改善しており、
同製剤を30g誤食して意識障害と呼吸不全をきたした82歳女性では、誤食2時間後に起立困難となって転院搬送、意識障害・呼吸不全のため気管挿管が行われた後、胃洗浄、活性炭投与が行われ、12時間後に意識・呼吸が改善しています。

上記の誤食したかゆみ止めクリーム100g中には
d-カンフル 1g(1,000mg) (働き:皮膚の血行を促進)
ジフェンヒドラミン塩酸塩 1g(1,000mg)(働き:皮膚のかゆみを元から抑え、鎮める)
リドカイン   2g(2,000mg)(働き:皮膚のかゆみの伝わりを止め、鎮める)
が含まれていると添付文書に記載があります。
ジフェンヒドラミンは、中毒症状が摂取後 30 分〜2時間で現れ、
軽微な中毒症状として傾眠,散瞳,口渇,紅潮,発熱,頻脈,嘔気,嘔吐、
中等度の中毒症状として興奮,錯乱,幻覚,心電図異常、
重篤な中毒症状としてせん妄,精神病様症状,痙攣,昏睡がみられ、
中毒量の目安は7.5mg/体重kg(体重60kgの方で450mg)、致死量の目安は20〜40mg/体重kg 、外皮用薬の経口摂取の場合、60歳以上の高齢者ではジフェンヒドラミン500mg程度で昏睡や痙攣をきたす可能性が示唆されています。
d-カンフルは消化管からの吸収が速く、摂取後5〜90分で中毒症状が現れ、
中毒症状としては、口腔・咽頭部の灼熱感、悪心、嘔吐、皮膚紅潮、頻脈、腹部疝痛、熱感、頭痛、めまい、興奮、錯乱、せん妄、幻覚、振戦、痙攣、呼吸抑制、意識障害、昏睡、ショックなどがみられ、
乳幼児経口致死量が1g、成人経口致死量が2gであり、乳幼児で0.5g以上、成人で1g以上飲んだときは、入院し厳重に監視する必要があるとみられています。
リドカインは、内服した場合は約40分で最高血中濃度に達し、
中枢神経系中毒症状としては初期には舌、口唇のしびれ、金属様の味覚、多弁、呂律困難、興奮、めまい、視力障害、聴力障害、ふらつき、痙攣などが生じ、その後、せん妄、意識消失、呼吸停止、悪心、嘔吐、心血管系中毒症状としては, 初期の神経症状に伴った高血圧、頻脈、心室性期外収縮、その後、洞性徐脈、伝導障害、低血圧、循環虚脱などが見られ、リドカインの経口中毒量 は5mg/体重kg(体重60kgの方で300mg)とみられています。

外皮薬においても誤食をすることにより中毒症状を生じることがあります。小児においても誤食を避けられるよう管理できるのが望ましいでしょう。

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