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アレルギー性鼻炎と嗅覚障害

2018.11.03

投稿者
クミタス

嗅覚障害の原因としては慢性副鼻腔炎、風邪、頭部外傷が多く、ほかにアレルギー性鼻炎、脳疾患、薬物、先天異常、加齢、心因的要因などが挙げられます。

嗅覚障害とは?


嗅覚に障害がある状態とは、においを感じにくい状態であることだけでなく、本来とは違うにおいを感じる、実際にはにおいがない状態でもにおいを感じるなども含まれます。

嗅覚脱失:全くにおいを感じない
嗅覚低下:においを感じにくい
刺激性異嗅症:本来とは違うにおいを感じる、どんなものも同じにおいを感じる
自発性異嗅症:常に(自分だけが)においを感じている、何もにおいがないはずなのに突然においを感じる
嗅盲:特定のにおいのみ感じない
嗅覚過敏:(自分だけが)においによる不快さを感じる状態
悪臭症:副鼻腔炎や扁桃炎など、主に上気道の炎症性疾患、腫瘍性疾患により病巣が放つ悪臭を常に感じる状態
自己臭症:実際には生じていないのに、自分が口臭、鼻臭、体臭を放っていると思い込んでいる状態 
など

味覚障害をともなう場合があり、海外の諸報告からは、女性の方が嗅覚障害の診療目的で医療機関を受診した方が多い傾向が見られる、との示唆もあります。

アレルギー性鼻炎と嗅覚障害との関係


アレルギー性鼻炎の有病率は、国内で 39%(ダニなどがアレルゲンとなる通年性アレルギー性鼻炎 23%、スギ花粉症 26%)で、増加傾向にあり、そのうち 54~67% が嗅覚低下を自覚し、21~45% で嗅覚検査の有意な閾値上昇が認められています。また、嗅覚に違和感を感じ受診した方の中で、アレルギー性鼻炎がその原因と考えられたのは 2~16% 程と報告されています。アレルギー性鼻炎よりも、血管運動性鼻炎や好酸球増多性鼻炎などの非アレルギー性鼻炎による嗅覚障害は、障害の頻度が高く程度も強いともみられていますが、

アレルギー性鼻炎による嗅覚障害は、鼻粘膜の肥厚、鼻汁過多にともなう鼻閉による影響が考えられています。また、スギ花粉症後期にくしゃみ、鼻汁、鼻閉が軽減してもしばらく嗅覚障害は継続していたり、アレルゲンとなる花粉の飛散時期以外でも、嗅覚障害が見られる場合があります。風邪をひくなどでの、ウイルス感染により嗅細胞が影響を受ける場合もありますが、アレルギーにともなう好酸球炎症によって、嗅神経性嗅覚障害を併発している可能性が示唆されています。最近の研究では、スギ花粉症の罹患期間が10年以上と長い方において、花粉の飛散時期以外の嗅覚機能の低下の程度が高い傾向が見られる、との報告もなされています。
 
アレルギー性鼻炎による嗅覚障害は、嗅神経性嗅覚障害を併発していない場合は、より改善し得る面もあり、鼻噴霧用ステロイド、抗ヒスタミン薬などの薬剤が選択肢として検討されます。

また、副鼻腔炎、風邪と嗅覚障害についても、別途お送りしたいと思います。

出典・参照:嗅覚障害診療ガイドライン
Suzuki M et al. Olfactory dyfunction out of season in seasonal allergic rhinitis. Ann Allergy Asthma Immunol 2018; 121: 366-381. 

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