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魚のアレルギー

2016.03.11

投稿者
クミタス

ヒスタミンによるアレルギー様症状以外に、魚を摂食してアレルギー症状が出現する場合においては、魚のタンパク質がアレルゲンとなる場合、魚に寄生するアニサキスがアレルゲンとなる場合があります。

魚のタンパク質がアレルゲンとなる場合は、アレルゲンの1つにパルブアルブミン(PA)が挙げられ、魚に共通して存在していますが、魚種により分子構造に違いが見られています。
そのため、魚種によってはアレルギー症状が出現しない可能性もありますが、魚類のパルブアルブミンは魚種間で抗原交差性があると考えられており、複数の魚にアレルギー症状が出現する要因にもなります。

パルブアルブミンは、魚の頭の部分に多く尾部にかけて減少し、魚種では、マグロ、サケなどの大型の回遊魚により多く含まれる、血合いには少ない傾向にあるとの報告があります。
サケ類については海で漁獲されるものが、日本ではアレルギー表示対象になりますが、「陸封型のヤマメ、遡河型のサクラマスのパルブアルブミン量はヤマメのほうが高く、患者血清を用いたELISAでは,ヤマメ抽出液のほうが強いIgE反応性を示した」との報告があります。

ほかに魚のアレルゲンと考えられているタンパク質として、コラーゲン、タラに含まれるアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ、マグロ、カジキに含まれるトランスフェリンなどが挙げられ、またエビやカニといった甲殻類以外にも、イカ、タコ、貝類の主要アレルゲンの1つであり、ウニ、ナマコなどの棘皮動物のアレルゲンの1つで、ダニ、ゴキブリのアレルゲンとの交差反応性が示唆されているトロポミオシンも魚のアレルゲンと考えられるケースも報告されています。

出典・参考:塩見一雄氏らによる諸研究ほか
「サケ類Oncorhynchus masou masou の陸封型(ヤマメ)と遡河型(サクラマス)のアレルゲンの比較解析」

くさや、魚醤に含まれるパルブアルブミン量は?


「ムロアジの生魚およびくさやの背肉に含まれるパルブアルブミンを定量した結果,くさやのパルブアルブミン量は,生魚と比べて明らかな減少は認められず、微生物を含むくさや液を用いてムロアジをくさやに加工しても,パルブアルブミンは顕著に分解されないことが判明した」
との報告があり、くさやにおいても生魚と変わらないパルブアルブミン量が含まれる可能性があります。

魚醤においては、「ゴマサバ,ハマトビウオ,ムロアジそれぞれを原料魚とし,Aspergillus oryzae を使用した麦麹と醤油製造用酵母 Zygosaccharomyces rouxiiで,常温 6ヵ月間発酵後に圧搾、火入れを行い、4℃で1 年間保存した魚醤は、パルブアルブミンが1μg/g 未満に減少した。」
「麦麹より分離したA. oryzae、食品や酵素の生産等に利用される糸状菌株A. oryzae、A. brasiliensis, Penicillium pinophilum, P. chrysogenum、P. biforme, Rhizopus microsporusには、マサバパルブアルブミンの分解活性があるが、魚加工品を分離源とする乳酸菌株Pediococcus pentosaceus、Lactobacillus plantarumのマサバパルブアルブミンの分解活性は低かった。」
との報告があり、菌株によっては分解が進みパルブアルブミン量が減少している可能性があると示唆しています。
出典:ゴマサバ,ハマトビウオ,ムロアジを利用したくさやと魚醤油に含まれる魚肉アレルギー原因物質パルブアルブミンの定量 2015

経皮感作の可能性


最近、手に皮膚炎のある方がレストラン勤務中に仕事上、魚を素手で日常的に触る機会を経て、腹痛、下痢、全身倦怠感などの症状が出現し、皮膚プリックテストにて複数の魚に陽性反応、パルブアルブミンに対する特異的IgE抗体反応陽性を示していた例が報告されており、経皮感作により魚アレルギーを発症する可能性が示唆されています。
出典:Two Cases of Occupational Contact Urticaria Caused by Percutaneous Sensitization to Parvalbumin.

手に皮膚炎のある方において、繰り返し特定の食品に触わる場合は、手袋をして触わるようにする対策も望ましいかもしれません。

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