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遺伝子操作について~食品への放射線照射

2014.12.24

投稿者
クミタス

遺伝子組換えとは、もともとの遺伝子に直接別の遺伝子を組み込んだものを指します。品種改良とは従来では遺伝子そのものに触ることなく交配による変異種の発生を促すものであるという点で異なります。ですが品種改良にしても、遺伝子を変えているものではあります。今回は食品への遺伝子操作として放射線照射についてのお話です。

食品への放射線照射


日本では発芽防止、ソラニンの生成阻止目的で、馬鈴薯への放射線照射が1974年から認められています。実は食品への放射線照射の商用利用を世界に先駆け始めたのは日本です。
食品への放射線照射とは、植物に放射線を照射することにより遺伝子を1つ、2つ壊すことで突然変異を起こし、形質が様々に変化した突然変異帯の中から有用な形質を持つものを選抜する品種改良法になります。病気に強い形質を作り出す、殺菌、殺虫・不妊化、抑成長による長期保存目的での用途が中心になります。
もともと存在しない新しい形質を作り出せたり、その品種が持つ優良形質を損なわずに目的形質のみを改良できたり、交配が難しい作物でも改良でき、過去にはナシ黒斑病に強い梨の品種改良にも使用されました。

日本では馬鈴薯にコバルト60のガンマ線を馬鈴薯の吸収線量が150グレイ(0.15キログレイ)を超えてはならず、再度照射をしてはならない、との範囲内で、80トンほどに照射がおこなわれていますが、ほかにベルギー、フランス、ハンガリー、オランダ、ウクライナ、デンマーク、フィンランド、イスラエル、ノルウェー、アメリカ、クロアチア、アルゼンチン、バングラディッシュ、チリ、中国、イスラエル、フィリピン、タイにて、香辛料を筆頭に穀類、タマネギ、ジャガイモ、ニンニク、冷凍魚介類、肉類、果物などに、総量で年間100万トンほど照射されていると言われています。
内訳は殺菌目的で香辛料・乾燥野菜に約46%、にんにく・じゃがいもの芽止めに約22%、穀物・果実の殺虫に約20%、食肉魚介類の殺菌に約8%、中国が最も多くの食品に照射しており、ヨーロッパでは苺への照射、アメリカでは生肉の病原菌(サルモネラ、カンピロバクターなど)殺菌にも利用されています。

安全性は?


いままで日本では米、小麦、タマネギ、みかん、ウインナーソーセージ、水産練り製品も許可品目として検討をしてきましたが、許可品目はじゃがいものみにとどまっています。ただ、今後香辛料において許可可能性があります。

放射線照射をするとすべての食品にではありませんが、特有の臭いがすると言われています。髪の毛が焦げたような臭いで、食品によっては食欲を損なうレベルでもあります。また退色する食品もあります。

安全性の上では、放射性物質の残留、照射した食品からの放射性物質の放出の可能性、放射線照射による副産物の産出を懸念する意見があります。

・照射により2ードデシルシクロブタノンが発生し、それをラットに与えたところ、細胞内の遺伝子(DNA)を傷つけるという報告
・照射により脂質が分解されることで2-アルキルシクロブタノン類が生成される。この物質は発ガンを誘発するという実験結果もある

WHOでは複数回照射をせず、10kGy(キログレイ:放射線の吸収量の単位)以下での照射においては、栄養成分量の著しい低下や栄養素破壊も含め健全性に問題は無く、照射食品を摂取しても問題になる量ではないとされています。
一方、この基準設定経緯の根拠や照射済み食品の安全性を裏付ける十分な試験データがある(公表している)と言えるか、輸入品を含め照射の事実を確認する方法の確立、照射食品を消費者が選定できないことについて懸念する国内外での声もあります。

輸入品において検査はされてはいるものの、かいくぐっているものもあり、EUの公定法にある簡易検査が広く求められるところです。

食品への放射線照射とアレルギー


一方、放射線の食品への照射がアレルギー活性を低減させられる可能性もあります。
これは放射線により食品のたん白質が変性するためであり、アレルギー低減のための放射線照射に関する研究報告は少ないのですが、乳、えび、卵では低減可能性があり、セロリでは見られなかったとの報告があります。

Poms, R.E. and E. Anklam Effects of chemical, physical, and technological processes on the nature of food allergens Journal of Aoac International 87, 6, p.1466 (2004)

Lee J. W. et al. Changes of the antigenic and allergenic properties of a hen’s egg albumin in a cake with gamma-irradiated egg white Radiation Physics and
Chemistry 72, 5, p.645 (2005)

Lee J. W. et al. Changes of the binding abilities of immunoglobulin G and E ongamma-irradiated ovalbumin by proteolytic enzymes Food Science and Biotechnology 14, 3, p.355 (2005)

Jankiewicz, A. et al. Influence of food processing on the immunochemical stability of celery allergens Journal of the Science of Food and Agriculture 75, 3, p.359 (1997)

Leszczynska, J. et al. The influence of gamma irradiation on the immunoreactivity of gliadin and wheat flour European Food Research and Technology 217, 2, p.143(2003)

完全に低減させるためには多くの放射線量が必要になり、その場合風味や色合い、状態をかなり変化させてしまうことになったり、損なわない程度に放射線量を留めるとアレルギー活性が少し落ちる程度の変化でしかないものもありますが、エビに関しては、そのバランスがある程度とれた商用化も将来可能かもしれないとの意見もあります。
このように食品によっては、アレルギー活性を低減させられる可能性がありますが、放射線照射の過程で産出され得る別の物質にアレルギー反応を示す可能性もゼロではありませんし、その他安全でない点が少しでもある場合は、照射食品を選択するか総合判断するところかと思います。
放射線照射食品の話ではありませんが、放射線感受性は個人差があり、アレルギー体質や感染症歴のある子供達や心臓疾患のある成人は対照群にくらべて高感受性である、との報告もあります(異論もあります)。

放射線を照射した馬鈴薯には、その旨の表示が義務付けられていますが、箱で出荷した馬鈴薯は箱に表示が成されていても、袋で小分けされる段階で表示されない場合もあります。加工食品には放射線照射馬鈴薯は使用が認められてはいませんが、もし使用されていたとしても総菜やレストラン、加工食品原料として使われる場合には表示義務がありません。尚、放射線照射食品はオーガニック商品とはみなしません。

放射線を照射した馬鈴薯は3月下旬~5月初旬に主に出荷され、放射線照射により約8か月間発芽しません。安全性に問題はないとされても、食の持つ意味とは機能だけではありませんので、ぜひ選んで食べたいという理由があるか、自分の子供に食べさせたいと思うか、少なくとも選択の余地は求めたいところです。

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