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食物アレルギーと急性膵炎

2016.10.28

投稿者
クミタス

食物アレルギーの症状として、腹痛、嘔吐、下痢といった消化器症状も比較的出現することがありますが、食物アレルギー反応が急性膵炎の原因となった可能性を示唆する例があります。

急性膵炎を起こしている可能性のある状態例
・(ほかの食物アレルギーの症状が落ち着いても)みぞおち~背中に強い持続痛がある。前かがみになると痛みが和らぐことがある。
・膵臓から分泌される酵素である血清アミラーゼ値、P型アミラーゼ値の上昇、尿中アミラーゼ値の上昇が見られる
・腹部造影CT検査で膵腫大など膵炎を示す画像所見が認められる

今まで報告されている食物例

もともとアレルギー反応を示していた食物にアレルギー反応を示し急性膵炎の診断もなされた例、初回摂取時に食物アレルギー反応を示して急性膵炎の診断もなされた例、食物経口負荷試験下での誘発例などがあり、国内外で今までに、ピーナッツ、卵、バナナ、乳、キウイフルーツ、魚などでの報告例があります。

また小児に限らず、成人においても急性膵炎に至る報告がなされていますが、他の文献を含め、その後は誘発原因となる食物の除去により、食物アレルギー反応および急性膵炎発症には至っていないことが伺えます。

なぜ食物アレルギー反応が急性膵炎に関与するのか?


膵臓は炭水化物を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼやホスホリパーゼA2(PLA2)、タンパク質を分解するトリプシンやエラスターゼ1といった消化酵素を産生する臓器で、これらの酵素を含む膵液を分泌します。
膵臓の内部には膵管があり、膵液は膵管を通り十二指腸とつながる部分のファーター乳頭が食事前は閉じていて、食事後は開くことで膵液が十二指腸に流れ込み、そこに胆汁が混ざり食物の消化を助けます。

この際、摂取した食物に合わせて適した分解酵素が十二指腸に分泌されるようになっており、分解酵素により膵臓自体を消化しないように十二指腸に流れ出ててから弱アルカリ性となり活性化して消化能力を持つようになっているのが正常の状態になります。

急性膵炎発症においては様々な要因が挙げられますが、アルコール、胆石(特に女性の急性膵炎における主要因)が2大成因となり、胆石が成因となる場合は、胆石が十二指腸に排せつされる際にファーター乳頭の辺りにはまったり、自然排石後にファーター乳頭が腫れる等により膵管が閉塞し、胆汁が膵管へ流入して膵臓で産生される分解酵素が活性化する等、何らかの理由で活性化した分解酵素等により膵臓が炎症反応を起こすと急性膵炎を引き起こすことになるとも考えられています。

​食物アレルギー反応からの急性膵炎誘発メカニズムはまだ明確になっていない部分もありますが、食物アレルギー反応後に急性膵炎を起こした過去症例の中では、食物摂取後にファーター乳頭が閉じた状態にあった可能性を示唆する報告もあり、当該アレルゲンを経口摂取したことでファーター乳頭等が腫れた可能性も1つに挙げられています。

報告数としては多くはない食物アレルギー反応からの急性膵炎例ではあるものの、他の食物アレルギー反応が落ち着いた後もみぞおちや背中に痛みが続く、嘔吐や下痢が続く場合は、速やかに受診するのが望ましいでしょう。


参考:ピーナッツアレルギーが関与した急性膵炎の3歳男児例 2015
昭和大学医学部小児科学講座
食物アレルギーが関与した急性膵炎の2例
国立病院機構相模原病院小児科、国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部
バナナによる食物アレルギーが関与したと思われる急性膵炎
群馬アレルギー再生臨床研究センター
Is food allergy a cause of acute pancreatitis?1990
急性膵炎診療ガイドライン2015

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