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加熱調理後の食中毒

2018.03.08

投稿者
クミタス

芽胞型⇒発芽⇒増殖型⇒芽胞形成 といったサイクルをたどる芽胞形成菌は、加熱調理をしても完全に死滅、失活しないことがあり、また加熱調理後の温度、状態により増殖し、一定量以上体内に取り込んで毒素を吸収することで食中毒をおこすことがあり、加熱調理後にも注意が必要になります。

加熱調理をしても完全に死滅しないことがある食中毒原因菌


・ウェルシュ菌

嫌気性菌で、カレーやシチュー、チキンスープのような加熱調理を経て酸素量の少なくなった液状の料理の中でも芽胞の状態で生き残り(100℃で4~6時間加熱でも死滅しないとみられています)、50℃以下になると芽胞から発芽し43℃~47℃で発育、増殖が最も活発になり、20℃くらいまでの間、増殖します。肉を使用した料理での発生が多い傾向ですが、魚や野菜を使用した料理での発生もあります。
そのため、加熱調理後の料理でも、増殖したウェルシュ菌を含む場合、ヒトの体内で芽胞が発芽し増殖し、芽胞をつくり発芽し、芽胞を作る際に毒素のエンテロトキシンが作り出され、腸管が吸収して下痢や腹痛をおこすことにもなります。

ウェルシュ菌食中毒は、菌が1 g当たり10万個以上に増殖した料理、食品を摂食することが発症リスクを高めますので、菌の増殖を抑制することが予防対策になりますが、調理後に残った料理が冷めていく過程では、芽胞形成、発芽を繰り返し増殖することになるため、大量の作り置き料理がゆるやかに温度低下するような場合は、食中毒リスクが高くなります。そのため、早めに冷蔵することは増殖抑制対策になります。
大量調理時は加熱調理後に食品を冷却するうえで、病原菌の発育至適温度帯(約20℃~50℃)の時間を可能な限り短くすることを念頭に、30分以内に中心温度を20℃付近(60分以内に中心温度を10℃付近)まで下げるのが望ましいとされています。
またずっと加熱し続けることも増殖抑制策になります。


・セレウス菌

ウェルシュ菌と同じく芽胞形成する菌で、芽胞の状態では加熱調理をしても死滅せず(100℃で30分加熱でも死滅しないとみられています)生き残ります。嘔吐型のタイプは、チャーハン、ピラフ、焼きそば、スパゲッティなど、下痢型のタイプは弁当やプリン、バニラソース、スープ類、ソーセージ、肉類、野菜など多種の食品が原因食物となることがあります。

嘔吐型は、食品中で増殖し消化酵素や熱、酸、アルカリにも安定的な毒素(セレウリド)量が多くなることが原因となり、摂食後30分〜6時間と発症までの時間が短いのが特徴です。国内の発生例のほとんどは嘔吐型になります。下痢型は芽胞が発芽し増殖するサイクルで、芽胞を作る際に作り出される毒素のエンテロトキシンを腸管が吸収して下痢や腹痛をおこします。
セレウリドは126℃で90分の加熱でも失活しないともみられており、食品中での増殖抑制のためには、室温に数時間以上など長時間放置せず、冷蔵保存することが対策になります。


・ボツリヌス菌

ボツリヌス症の1つにボツリヌス菌による食中毒があり、ボツリヌス菌も芽胞を形成する菌で、なかでも120℃で4分以上の加熱でなければ死滅しない型のボツリヌス菌もあります。
ほかに、はちみつなどが原因食物に挙げられる乳児ボツリヌス症、創傷部位にボツリヌス菌の芽胞が発芽し産生された毒素により発症するボツリヌス症、成人腸管定着ボツリヌス症、バイオテロなどでボツリヌス菌毒素の噴霧を吸入し症状出現する吸入ボツリヌス症があります。
真空パック、パック商品や缶詰商品中で、増殖している場合がありますので、膨張していたり、異臭があるときは食べないことも食中毒対策になります。

ボツリヌス菌による中毒、食中毒について
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2019


出典・参照:厚生労働省 感染症・予防接種情報
農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート
NIID 国立感染症研究所
食品安全委員会 ファクトシート
公益社団法人 日本食品衛生協会 知ろう!防ごう!食中毒 ほか

留意したい食中毒~冷蔵庫内でも繁殖する細菌、重症例において
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2287

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