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感染症とプール~腸管出血性大腸菌

2017.08.03

投稿者
クミタス

腸管出血性大腸菌感染症は、夏に発生が増える感染症の1つであり、イベント時には集団発生することもあります。

消毒不使用プール水が感染源となることも


塩素消毒をしない簡易ビニールプールにて、腸管出血性大腸菌保菌児と一緒に保育園で使用した児での腸管出血性大腸菌感染例もあり、下痢症状のある児や排菌中の感染症患者は、プールに入らないようにすること、がまず望ましい対応になります。
プール遊び前のシャワーとお尻洗いを徹底し、排せつが自立していない乳幼児においては、他の児らとプール水を共有しないようにし、複数人で同じプールを使用する場合、健康保菌者による感染拡大を防ぐための消毒対応も必要になってきます。

遊離残留塩素濃度0.41mg/Lでプール熱(咽頭結膜熱)の原因病原体であるアデノウイルスの不活化が、大腸菌、溶血性連鎖球菌は0.25mg/Lにて15~30 秒間で死滅、チフス菌、赤痢菌、淋菌、コレラ菌、ブドウ菌は0.10mg/Lにて15~30 秒間で死滅すると見られています。

「学校環境衛生基準」内の「水泳プールに関する学校環境衛生基準」では学校プールにて、また「保育所における感染症対策ガイドライン 」では保育所での簡易用ミニプールにおいて、遊離残留塩素濃度が0.4mg/L~1.0mg/Lに保てるようにすることとしています。
塩素剤は日光、有機物、雑菌などにより分解が進むため、日当たりの良い場所で一度に大人数でプール使用する場合や水替え頻度が少ない場合は、濃度が低くなりやすいため、調整のうえ家庭用でも簡易プールを複数人で使用する場合など、塩素剤を使用する際は、以下計算式を活用頂き必要量を確認頂ければと思います。

塩素剤の必要量(gまたはmL)=(目標の塩素濃度(mg/L)×プールの容量(㎥)/塩素剤の有効塩素濃度(%))×100

0.4mg/Lの塩素濃度にしたく、有効塩素70%濃度の顆粒タイプ塩素消毒剤を使用、プールの大きさが直径3m、深さ75cmの円形の場合は
0.4×(1.5m(半径)×1.5m(半径)×3.14(円周率)×0.75(深さ))/70 ×100
=3gの顆粒タイプ塩素消毒剤を使用

1mg/Lの塩素濃度にしたく、次亜塩素酸ナトリウム6%の液体消毒剤を使用、プールの大きさが長さ5m、幅4m、深さ50cmの長方形の場合は
1×(5m(長さ)×4m(幅)×0.5(深さ))/6 ×100
=166mlの液体消毒剤を使用

有効塩素70%濃度の顆粒タイプ塩素消毒剤を使用、プールの大きさが直径3m、深さ75cmの円形で、現在0.2mg/Lの塩素濃度のプール水を0.7mg/Lの塩素濃度に調整する場合
(0.7-0.2)×(1.5m(半径)×1.5m(半径)×3.14(円周率)×0.75(深さ))/70 ×100
=2.6gの顆粒タイプ塩素消毒剤を使用

保育所における感染症対策ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf
「学校環境衛生基準」内の「水泳プールに関する学校環境衛生基準」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2010/04/08/1292465_05.pdf

懸念と対応


一方で、消毒されたプールでの水泳による喘息の悪化、皮膚への刺激などへの懸念もあり、1例として塩素とアンモニアなどの窒素化合物が化合し生成された、気体のトリクロラミンが原因となり、咳、呼吸困難といった呼吸器症状が出現する場合があります。
カルキ臭は塩素の臭いもありますが、トリクロラミンの臭いが主で刺激のある臭いになり、トリクロラミンは揮発性が高く、日光により分解されるため、屋外プールよりも屋内プールでの吸入量が多くなりやすい面があり、国内屋内プール使用時の14歳女児での症例報告もあります(出典:水泳喘息が疑われた1例)

消毒剤は適した濃度での使用を、プールに入る前にはトイレに行きシャワーを浴び消毒を使用、トイレに行った後に再度プールに入る際もシャワー、消毒を使用するなどプールをよごさないための配慮、プールから上がった後も十分にシャワーを浴び残留をしないよう心がけたいですね。

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