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【2017.8.15更新】小麦のアレルゲン、変性について

2017.05.22

投稿者
クミタス

小麦のタンパク質は、水・塩不溶性タンパク質であるグルテンと水・塩可溶性タンパク質に分かれ、グルテンは70%アルコールに溶解するグリアジンと溶解しないグルテニンが結合し成り立ちます。小麦のアレルゲンにおいては、ωー5グリアジン(Tri a 19)が知られていますが、ωー5グリアジン以外にも以下のアレルゲンタンパク質が考えられています。

●水・塩不溶性タンパク質(グルテン)
○グリアジン(アルコール可溶性)
・α―グリアジン(Tri a 21)
加水分解小麦による運動誘発アナフィラキシーに関連
・βーグリアジン(Tri a 21)
加水分解小麦による運動誘発アナフィラキシーに関連
・γーグリアジン(Tri a 20)
分子量:35~38kDa
・ω―5グリアジン(Tri a 19)
アナフィラキシー、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーに関連
分子量:65kDa
○グルテニン(アルコール不溶性)
・高分子量グルテニン(Tri a 26)
アナフィラキシー、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーに関連
分子量:88kDa
・低分子量グルテニン(Tri a 36)
アナフィラキシー、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーに関連
分子量:40kDa

●水・塩可溶性タンパク質
・αーアミラーゼ/トリプシンインヒビター (Tri a 15、Tri a 28、Tri a 29、Tri a 30)
吸入による喘息(パン職人喘息)に関連
分子量:13~16kDaと小さい
・アシルーCoAオキシターゼ
・ペルオキシダーゼ
分子量:36kDa
・LTP(脂質輸送タンパク質。Tri a 14)
分子量:9kDaと小さい

調理による抗原性変化


アレルゲンタンパク質によっては、加熱により抗原性が低減するもの、しないものがありますが、小麦粉が主原料、原料で加熱工程を経た状態で摂食するうどん、パン、焼菓子、揚げ菓子などの加工食品における小麦タンパク質の変化については、

うどん、パンからタンパク質を抽出したところ、
水・塩可溶性タンパク質は減少していた
水・塩不溶性タンパク質はSS結合を切断しないと検出されなかった
パンはアミノカルボニル反応によるためか、タンパク質の凝集を認めた

小麦を使用したクッキー、蒸しパン、かりんとうからタンパク質を抽出したところ、
水・塩可溶性タンパク質であるαーアミラーゼ/トリプシンインヒビターファミリーのタンパク質の中には、調理後の検出量が著しく低下したタンパク質があった
水・塩不溶性タンパク質であるグリアジンの検出量は変わらず、調理による影響は見られなかった

水・塩不溶性タンパク質のグリアジンは胆汁を加えることで、可溶化され消化されやすくなり、
グルテニンは加熱時のpHが酸性の状態でより安定的で耐熱性がある、
との報告もあります。
加工により抗原性にどのような変化があるか、またお送りしたいと思います。


出典・参考:加工条件の異なる菓子からの小麦アレルゲンの検出 
小麦タンパク質とアレルギー 小麦依存性運動誘発アナフィラキシーに注目して ほか

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