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食物アレルギーにおける考えられる発症因子(原因・要因)

2017.05.12

投稿者
クミタス

食物アレルギーの発症においては、関与する可能性のある因子について、今までにも様々な報告がなされており、クミタスでもご紹介してきましたが、ここでまとめてお送りします。

家族歴


両親、兄弟姉妹のうち1人でもアレルギー性疾患がある場合に、食物アレルギーの有症率が2.6倍ほど(95%信頼区間 1.2~5.6)に高まるといった内容の報告はなされていますが、家族歴のみで発症に重要な影響を与えるとするには否定的な見方もあり、家族歴が有る場合と無い場合で、感作において有意差があるか等、これからも考察が求められるところでもあります。

兄弟姉妹間のアレルギー
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1022

遺伝的素因


特定されている段階ではありませんが、影響する可能性のある遺伝子に関する報告は様々になされています。

・フィラグリン遺伝子変異
フィラグリン遺伝子変異がある場合、食物経口負荷試験で診断されるピーナッツアレルギーの発症率が有意に増加したとの報告もあります。
7歳以上のピーナッツアレルギー発症リスクが5.3倍(95%信頼区間 2.8~10.2)。
8歳、11歳でのピーナッツ感作リスク6.8倍(95%信頼区間 2.6~17.5)
8歳、11歳でのピーナッツアレルギー発症リスク3.9倍(95%信頼区間 1.3~11.8)

・FOXP3遺伝子変異
ヒトのIPEX症候群(全身性の自己免疫疾患を特徴的な症状とした、多腺性内分泌不全症、腸疾患を伴う免疫調節異常)ではFOXP3遺伝子の突然変異の結果、機能性の制御性T細胞が欠損しており、自己免疫疾患や炎症性腸疾患、アレルギーが発症するとも見られています。

・IL-10遺伝子多型
​インターロイキン-10(IL-10)は、炎症症状を抑制する抑制性サイトカインですが、IL-10-1082AA多型ではIL-10産生能の低下に関与することが報告されており、また食物アレルギー患者ではIL-10-1082AA多型が多く存在し、IL-10-1082AA多型では食物アレルギー発症リスクが2.5倍との報告もあります(95%信頼区間 1.0~6.4)。

・IL-13遺伝子多型
C-1055T多型では食物アレルゲン感作リスクが3.49倍(95%信頼区間  1.52~8.02)との報告もあります。

・NLRP3遺伝子多型
食物誘発性アナフィラキシーに関連する遺伝子多型の可能性

皮膚バリア機能低下


・フィラグリン遺伝子変異
日本人のアトピー性皮膚炎患者さんの中では、約20~30%においてフィラグリン遺伝子変異が見られると言われており、フィラグリン遺伝子変異は塩基配列の異常以外に、配列の繰り返しの数の少なさが、アトピー性皮膚炎発症に影響する可能性についての示唆があります。
皮膚(上皮)バリア機能が低下した状態では、皮膚経由で食物抗原など様々な物質を取り込みやすくなり、経皮感作する可能性が高まると考えられています。

皮膚バリア機能の制御に向けて①
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1828

アトピー性皮膚炎発症


皮膚に炎症、傷がある状態は、経皮感作リスクがより高まる状態とも言えます。

・重症の皮膚炎あり
ピーナッツアレルギー発症リスク5.2倍(95%信頼区間 2.7~10.2)

・3か月までにアトピー性皮膚炎を発症
食物アレルゲン感作リスク6.18倍(95%信頼区間 2.94~12.98)

・中等症以上のアトピー性皮膚炎
食物アレルゲン感作リスク25.6倍(95%信頼区間 9.03~72.57)

環境中のアレルゲン


家庭環境中の食物抗原量においては、食物アレルギー発症との関連が考えられており、ピーナッツでの報告もなされています。

・家庭内消費量
参照:摂食後に室内に残存するタンパク質について
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2558
・埃内量
・アジュバントの関与可能性
参照:アレルギーにおけるアジュバントの作用
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2693

出生季節、日照など


・出生季節
秋・冬産まれの方でのアレルギー発症率がより高い傾向が見られるとの報告があります。

アレルギー性疾患発症とDNAメチル化、誕生時の季節との関係
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1316

・日照
日光照射からも体内生成されるビタミンDが不足する場合の関与可能性も考えられますが、乳児期などに日照が少ないことは、発症リスクを高める因子となるか検討段階でもあります。



遺伝的要因だけでなく、後天的な遺伝子構造の変化、環境要因なども含め、複数の因子が複合的に影響し発症に至るとも考えられていますが、今後もまた新たな情報をアップデートしていきたいと思います。


出典・参考:食物アレルギー診療ガイドライン2016
食物アレルギー発症-寛解に関わるinterleukin-10遺伝子多型

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