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ボツリヌス菌による中毒、食中毒について

2017.04.08

投稿者
クミタス

ボツリヌス菌は耐熱性の芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌であり、神経毒素(ボツリヌストキシン)を産出します。

ボツリヌス菌による中毒には、ボツリヌス菌に汚染されボツリヌス菌の産生する毒素(ボツリヌストキシン)を含む食品を摂取することでのボツリヌス食中毒、1歳未満の乳幼児がボツリヌス芽胞を摂取後に腸管内で発芽、増殖し産生された毒素が腸から吸収されることで発症する乳児ボツリヌス症、そして報告数は多くはありませんが、深部の傷にボツリヌス菌が感染し産生する毒素が原因となる創傷ボツリヌスなどに分かれます。

乳児ボツリヌス症は、6か月くらいまでの乳幼児におこりやすく、腸内細菌叢が未発達のうちは、ボツリヌス菌が定着しやすいため発症リスクが高くなると考えられています。

■症状

ボツリヌス菌は産生する毒素(ボツリヌストキシン)の抗原性の違いによりA~G型のに7型に分類されます。
乳児ボツリヌス症はA型、B型が原因毒素であることが多いですが、C型、E型での発症例もあります(今までにハチミツからはA型、B型、C型、E型、F型が検出されています)。

乳児ボツリヌス症の症状としては、3~30日間の潜伏期間があるとも見られていますが、便秘が続く、元気がない、哺乳不良、泣き声が弱い、無表情、脱力、ぐったりしている、よだれが多い、頭を支えられない・首のすわりが悪くなった等が挙げられています。
乳児ボツリヌス症を発症すると便秘になりやすく、便秘の間に毒素が産出され体内にとどまりやすくなる可能性があります。乳児ボツリヌス症を発症した10か月男児で、便中のボツリヌス菌とA型ボツリヌス毒素が陰性となるまでに146病日、便秘改善までに181病日要したとの報告例もあり、便秘や吸乳力が弱くなったなど異変を感じた場合は早めに受診されるのが望ましいかと思います。

ボツリヌス食中毒は、8~36 時間の潜伏期間(早い場合は5~6 時間、遅い場合は2~3日間)を経て、症状は同様に筋弛緩・脱力を主として、眼球運動の麻痺・対光反射の緩慢、眼瞼下垂、瞳孔散大、無呼吸となる場合があると見られています。

■原因食物

ハチミツ中にボツリヌス菌が芽胞の状態で存在することがあり、ボツリヌス芽胞を含むハチミツを摂取後に腸管内で発芽、増殖し産生された毒素(ボツリヌストキシン)が腸から吸収されることで、乳児ボツリヌス症を発症することがあります。
芽胞の状態は熱耐性がありますので、加熱したハチミツでも1歳未満の子供に蜂蜜を与えることは、乳児ボツリヌス症発症の恐れがありますので、外国産、国産問わず1歳未満の子供に蜂蜜は食べさせないように避けてください。
ハチミツを摂取していない児での発症もあり、井戸水、汚染野菜を使用した野菜スープ中のA型ボツリヌス毒素での発症例、精製されていない黒糖、糖蜜から検出された報告例もあります(Detection of Clostridium botulinum in natural sweetening.)。原因食物を特定できない場合もありますので、ハチミツを摂取していない場合でも便秘が続く、泣き声が弱いなど上記症状が見られる場合は、早期に受診するのが望ましいかと思います。
また、E型ボツリヌス毒素は、魚の腸に含まれることがあり腸の洗浄不足による、いずしを摂取しての食中毒例などがあります。

ボツリヌス菌は芽胞の状態で土壌中によく存在し、pHが4.6未満の強い酸性のもとでは増殖しにくいですが、pHが低いと既に産出された毒素は分解されにくい面があると言われています。
嫌気性で増殖に酸素を必要とせず、pHにおいても発育しやすい環境にボツリヌス菌芽胞が混入した場合、漬けている過程の食物や開封前缶詰内、真空パック内などの空気の少ない環境内に長期で毒素を産出し得、菌数が増えている場合もあります。
野菜は土が残らないよう十分に洗浄し、自家製の漬物づくりの際はpHコントロールに注意を払い、膨張したパック食品や缶詰は食べないようにしましょう。

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