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皮膚の恒常性維持と亜鉛

2017.02.19

投稿者
クミタス

低体重出生児、低栄養状態の方において、欠乏する栄養素の1つに亜鉛が挙げられます。低出生体重児においては、腸管からの亜鉛吸収能が未熟な状態である場合があり、亜鉛摂取量が少ないと急速な体の発育に伴う亜鉛需要に対して亜鉛の体内備蓄量が不足となり、亜鉛欠乏状態になるリスクがあり、また母乳に含有の亜鉛濃度が低いことでの亜鉛欠乏となる場合もあります。

母乳に関するトピックス~低亜鉛母乳による乳児亜鉛欠乏症
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1588

成人の方においては、基礎疾患、摂取量、吸収能、排泄促進といった要因から亜鉛欠乏になりやすくなり、入院患者さんにおいて低栄養状態の方は亜鉛欠乏リスクが高いとの報告もあります。

亜鉛はタンパク質の生合成、骨の発育など成長発育に必要な必須微量元素のひとつで、様々なタンパク質合成、核酸合成、酵素活性等に関与しますが、創傷治癒を促進する可能性が考えられています。

亜鉛の補充による皮膚症状改善


血清亜鉛値が低い状態で、重症おむつ皮膚炎や紅斑、びらん、鱗屑といった皮膚症状がある児に亜鉛の補充をおこなうことで、皮膚症状が改善する例が幾つか報告されています。

早産極低出生体重児(在胎27週3日、出生体重1114g)で完全母乳で生育、4か月時から手足に湿潤したびらんを伴う紅斑が出現し、臀部や顔面へ拡大していったため、抗菌薬の内服・外用をしたが難治により、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を疑い入院、脱毛や下痢はなかったが、顔・頭に湿潤した鱗屑痂皮をつけた紅斑・びらんが鼻周囲を中心に多発、手指・足趾にも紅斑があり、臀部にも落屑性紅斑、角膜びらんがみられた。血液検査で患児の血清亜鉛は14μg/dL と低下しており、母乳亜鉛は31μg/dL(基準値≧100)と低値であったことから亜鉛の補充としてポラプレジンク顆粒 37.5mg(亜鉛として 17mg=3.8mg/kg)/日を内服、クロベタゾン酪酸エステル軟膏外用で、2日後にはかなり皮疹が改善した。ポラプレジンク顆粒は18日間内服を経て中止後に症状の再燃はなかった(出典:極低出生体重と低亜鉛母乳による後天性亜鉛欠乏症の1例)

参考:極低出生体重児における血清亜鉛値とおむつ皮膚炎の関連

マスト細胞から放出された亜鉛が皮膚の恒常性維持に関与する可能性


マスト細胞(肥満細胞)はIgEに対する高親和性受容体(FcεRI)を発現し、IgEがアレルゲンと反応すると、高親和性受容体を介してマスト細胞は活性化し、ヒスタミンなどの炎症性のメディエーターが放出され、くしゃみ、鼻水、かゆみといった炎症を引き起こします。
このヒスタミン含有顆粒に亜鉛が含まれており、刺激にともない細胞外に放出されますが、その亜鉛が皮膚における炎症性サイトカインのIL-6、TNF-αの誘導を調節し、皮膚の恒常性維持に関与している可能性が示唆されています。

亜鉛がアレルゲンとなる金属アレルギー症例もありますが、亜鉛の免疫システムにおける役割についてまたお送りしたいと思います。


出典・参考:創傷治癒における亜鉛:亜鉛トランスポーターの役割

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