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皮膚バリア機能の低下要因とは?制御に向けて①

2016.12.17

投稿者
クミタス


皮膚(上皮)バリア機能が低下した状態では、皮膚経由で様々な物質を取り込みやすくなり、経皮感作する可能性が高まると考えられていますが、皮膚バリア機能が一度低下した皮膚を回復し得る対策はあるのでしょうか?
今回は、考えられている皮膚バリア機能低下要因例からお送りします。

皮膚バリア機能低下要因


日本人のアトピー性皮膚炎患者さんの中では、約20~30%においてフィラグリン遺伝子変異が見られると言われており、フィラグリン遺伝子変異は塩基配列の異常以外に、配列の繰り返しの数の少なさが、アトピー性皮膚炎発症に影響する可能性についての示唆があります。一方で約70~80%のアトピー性皮膚炎患者さんにおいてはフィラグリン遺伝子変異が見られない皮膚障害であると言えます。

皮膚バリア機能においては、角質層バリア以外に細胞同士を接着するタイトジャンクションのバリアの重要性について示唆されています。タイトジャンクションは、上皮細胞をつないでバリアを形成したり、栄養吸収やイオン環境保持などの生体機能の制御や、情報伝達制御に関与していると考えられており、皮膚だけでなく低マグネシウム血症、硬化性胆管炎などに関わっている可能性があるとも見られています。
タイトジャンクションバリア低下となる要因可能性として以下等が挙げられています(一例)。

・細胞同士を接着するタイトジャンクション(密着結合)の構成因子であるタンパク質であるクローディン1(claudin-1)の発現量が低下することでの上皮細胞間バリア機能低下
クローディンは30種近くの分子が確認されていますが、表皮タイトジャンクションを構成しているのはクローディン1、4などと見られています。
・ダニ、花粉などのアレルゲンに含まれるプロテアーゼがタイトジャンクション構成タンパク質を切断する可能性
・PM2.5の主成分であるディーゼル排気微粒子(DEP)などがre-active oxygen species(ROS)の産生を介し酸化ストレスを誘導しタイトジャンクション構成タンパク質を切断する可能性

基底層、有棘層(ゆうきょくそう)、顆粒層、角質層からなる表皮の多くはケラチノサイトが占めています。角質層では水分を保持し外部からの侵入物を防御する役割を果たしながら古くなった角質層ははがれ、新しいケラチノサイトが角質層まで押し上げられますが、このケラチノサイトの分化が抑制されると、皮膚の乾燥、落屑、紅斑、掻痒などを引き起こす場合があります。

皮膚バリア機能に影響を与え、フィラグリン発現低下等にも関与する要因として以下等が考えられています(一例)。

・Th2サイトカインなどの様々な炎症性サイトカインの存在
角層バリア機能が低下した皮膚からの感作においてはTh2型の反応が起こりやすとの報告もありますが、Th2サイトカインが表皮において抗菌ペプチドの発現を低下させ、またフィラグリン発現を低下させ、表皮分化を抑制する可能性が示唆されています。
Th2細胞が産生するサイトカインの1つIL-4やIL-13は、表皮角化細胞のフィラグリン発現低下に影響する物質とも見られており、IL-31はかゆみ惹起物質と考えられています。
好塩基球がTh2細胞の誘導に寄与する可能性については以前から示唆されており、また、そのメカニズムについての報告もあります(2017.1.17 東京医科歯科大学)

・PAR2の活性
PAR2が活性するとTh2優位のアレルギー炎症が起こり、そのことでのフィラグリン発現低下、フィラグリンの代謝産物の減少により角層のpHが上昇し、アレルギー性の炎症を起こしやすくする可能性も示唆されています。

・ヒスタミン
かゆみに関係する物質として知られており、炎症を起こした皮膚細胞に多く見られますが、ヒスタミンにより表皮分化に関連するタンパク質であるケラチン、ロリクリン、そしてフィラグリンの発現を低下させ、表皮と角質層が薄くなり、表皮分化を抑制し皮膚バリア機能を障害する可能性についての報告もあります(Histamine suppresses epidermal keratinocyte differentiation and impairs skin barrier function in a human skin model)。

・PPARαの低下
角質バリアの破壊による刺激やTh2サイトカインによって発現低下すると見られており、PPARαの低下は、アレルギー性の炎症に関与するTARCなどの発現が亢進するとの示唆もあります。


また、遺伝的、環境因子から角質pHが上昇することは、アトピー性皮膚炎惹起・増悪を引き起こす可能性を挙げる意見もあり、悪循環をもたらす可能性があります。
皮膚バリア機能回復やかゆみへの対策について、今後どのような可能性があるかについてお送りします。

出典:Intragenic Copy Number Variation within Filaggrin Contributes to the Risk of Atopic Dermatitis with a Dose-Dependent Effect. Brown SJ et al; J Invest Dermatol 132: 98-104
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