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多品目の食物除去による身長への影響

2016.10.17

投稿者
クミタス


複数の食物にアレルギー症状があり、血液検査や症状からの総合判断のもと、食物経口負荷試験を経て診断確定のもと特定の食物の除去をしている方もいらっしゃる一方、実際は症状を誘引するアレルゲンでない食物の除去もおこなっている方もいらっしゃいます。

食物除去の程度により身長に与える影響を比較した調査があります。

・2011年3月までに仙台医療センターを受診しアレルギー専門医に1年以上の通院歴がある119名と一律的多品目の食物除去を指示する小児科に1年以上の通院歴がある34名を対象
・年齢の中央値は5.4歳
・男女比は2.1

アレルギー専門医に1年以上の通院歴がある群での初診時の除去品目数は4.0品目
一律的多品目の食物除去を指示する小児科に通院歴がある群での初診時の除去品目数は6.5品目

初診時の身長は同じ年齢の子供と比べるとどちらの群も標準身長よりやや低い傾向にあるが、
アレルギー専門医に1年以上の通院歴がある群では-0.21SD(標準偏差)
一律的多品目の食物除去を指示する小児科に1年以上の通院歴がある群では-0.65SD(標準偏差)
と一律的多品目の食物除去をおこなっている子供の方がより身長が低い傾向にあった、との報告があります。

尚、この調査では双方の群でアレルギー合併症等の背景に差はなく、一律的多品目の食物除去を指示する小児科に通院歴がある群においても食物経口負荷試験をおこなったところ、除去品目数は3.0品目となったということも記しています。

また他院で厳格除去食を指導され,成長障害をきたした姉弟例として、乳児期に全身びらん.卵白で全身じんましんの既往があり卵、乳、小麦、大豆、米完全除去、そして魚類+夏野菜+芋除去をおこなっていた7歳男児において、肺炎にて入院時に調べたところ-3.0SDの低身長と-10%のやせが認められた、また低ナトリウム血症、低アルブミン血症も認められたとの報告もあります。
また入院時にアレルギーの血液検査をしたところ、総IgE値は1689IU/mlと高値であったが、食物RASTはすべて0クラス、スギ4スクラス,ダニ6クラスであったとあり、まず卵を食物経口負荷試験を経て除去解除をしたところ、6ヶ月後-2.5SD、1年後-1.8SDと身長が伸びた、とあります。

食物経口負荷試験を経るなど必然性があって食物除去をおこなっている場合においては最低限の除去に留めていることも多いですが、長期に渡っての除去が必要でなくなっている場合においての除去継続は、成長期では生育の阻害要因の1つにもなり得ます。

乳児期に強い症状を経験していると心配から除去解除を進めることへのリスクを感じ、念のための除去をおこなっていることもあるかもしれませんが、何らかの症状が出現している場合、食物アレルギーが原因でなくなっている可能性もあります。
不必要な除去をおこなうことは、成長面でのリスク懸念もあることを視野に、最低限の除去ができるようにすることが望ましいでしょう。


出典:多品目の食物除去が身長に及ぼす影響
国立病院機構相模原病院小児科
国立病院機構仙台医療センター小児科

厳格除去食療法により成長障害をきたした姉弟例
船橋二和病院小児科

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