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遺伝子組み換えとアレルギー~ゲノム編集

2016.09.21

投稿者
クミタス


輸入植物性油脂の精製段階でリン脂質などを除去するために使用されたリパーゼ、ホスホリパーゼが遺伝子組換え微生物を利用し製造されたものであったが、食品衛生法に基づく安全性審査を経ていないままマーガリン、ショートニング、ドレッシングに使用され販売されていたことが平成28年9月16日付けで公表されました。

食品衛生法に基づく安全性審査を経ていなかった遺伝子組換え微生物を利用した添加物についての対応
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000136848.html

この遺伝子組換え微生物を利用し製造されたリパーゼ、ホスホリパーゼは、最終製品には含まれず、また海外では食品添加物としても使用されているものであり、ただちに健康への影響があるとは考えていない、とし、安全性が確認されるまでの間、輸入者に対し当該植物性油脂の輸入、販売のとりやめを指示したが、既に流通している当該植物性油脂を用いたマーガリン、ショートニング、ドレッシングなどの回収については食品安全委員会の評価結果を見て判断する、としています。

安全性審査を受けていない遺伝子組換え食物が使用された商品は今までにも、輸入先から遺伝子組換えジャガイモが混入していない証明書が発行されているにもかかわらず遺伝子組換えジャガイモが混入使用されたと言われているスナック菓子(2001年 オー・ザック。回収対応済み)や、中国産米・コメ加工品、菜種、亜麻、パパイヤ(パパイヤ茶、ペットフードなど)などでの事例があります。

安全性審査を受けていない遺伝子組換え食品又はこれを原材料に用いた食品は、輸入、販売等が法的に禁止されていますが、安全性の審査は主に、組換えDNA技術(遺伝子組換え技術)により付加される性質、組換えDNA技術に起因し発生する影響についての審査になり、
・挿入遺伝子の安全性
・挿入遺伝子により産生される蛋白質の有害性の有無
・アレルギー誘発性の有無
・挿入遺伝子が間接的に作用し、他の有害物質を産生する可能性の有無
・遺伝子を挿入したことにより成分に重大な変化を起こす可能性の有無
等について検討されます。

遺伝子組み換え食物がアレルギーを引き起こすかどうかの確認


遺伝子組み換え食品がアレルギーを引き起こすかは、安全性評価基準に基づき以下方法から確認することとしています。

・挿入遺伝子の供与体(抗生物質耐性マーカー遺伝子供与体を含む)のアレルギー誘発性(グルテン過敏性腸炎誘発性を含む。以下同)に関する知見が明らかにされている
・遺伝子産物(タンパク質)についてそのアレルギー誘発性に関する知見が明らかにされている
・人工胃液による酸処理及び酵素(ペプシン)処理、人工腸液によるアルカリ処理及び酵素(パンクレアチン)処理、加熱処理により遺伝子産物(タンパク質)の分子量、酵素活性、免疫反応性等が変化するかどうかを明らかにし、分子量はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって示されている(免疫反応性は処理前の遺伝子産物(タンパク質)に対して、ウェスタンブロッティング法、ELISA法等で確認)
・遺伝子産物(タンパク質)と既知のアレルゲンとの構造相同性
・ヒトの健康を損なう恐れがないと判断できない時は、遺伝子産物(タンパク質)のIgE結合能を患者さんの血液を使用して検討。安全性の証明が十分ではないと考えられた場合は、皮膚テストや経口負荷試験などの臨床試験データを用いる

過去には遺伝子組み換え技術により生産されたα-アミラーゼなどの健康への影響評価がおこなわれており、既知のアレルゲンとの相同性(一致する配列があるか)、消化性、熱耐性についての検討に加え、物質により血清中IgEとの結合反応をみて交差反応性を調べられています。
https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20040812223

アレルギーの観点では、遺伝子組み換え技術により産生される新たなタンパク質の抗原性がどの程度かに留意するところですが、評価依頼がなされたものについて主に評価がなされ、もし新たなタンパク質の抗原性が高かった場合にどのような措置が取られるかについては、前例として日本では抗原性が高いと評価されているものがなかったことからも制度として定められているわけではなく、その都度専門家による評価がおこなわれることになっています。また、抗原性が高いかどうかはリスクの1つであり、ほかの健康への影響面も含めた総合評価にてその後の対応が検討されるものでもあります。

遺伝子組み換え技術により特定のタンパク質の抗原性を低減し得る可能性があり、遺伝子組み換え技術を安全に管理して使用することができるのであれば食の選択肢が広がる可能性もあります。

安全性審査を経ていないリスク懸念の高いものが含有されることなく、食品表示上で使用程度も明らかになることが望ましいでしょう。

審査継続中の遺伝子組換え食品及び添加物一覧 28年10月12日現在
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000071169.pdf

安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた遺伝子組換え食品及び添加物一覧 28年10月12日現在
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000071167.pdf

遺伝子組換え食品の安全性に関する審査
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/anzen/anzen.html

遺伝子組換え食品Q&A 厚生労働省医薬食品局食品安全部
https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/qa/qa.html
 

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