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呼吸器疾患における被災時に意識しておきたい点

2016.09.19

投稿者
クミタス

被災することで建築物が崩壊したり、汚泥が室内にも入り込むことがあり、粉塵を吸引することは喘息発作を引き起こしたり、呼吸器障害を起こすことがあります。

東日本大震災後2カ月間は、地元病院(石巻赤十字病院)での呼吸器救急患者の入院が同時期の過去年比で3倍以上、肺炎患者は4倍、COPD 増悪での入院患者は5~7倍、気管支喘息発作での入院患者は4~6倍に増加したとの報告もあります。

被災状況にも依りますが、増悪要因として以下が挙げられます。
・被水、汚水や海水を吸い込む(重油、砂粒、木片なども)
・寒い環境、低体温
・停電等での酸素吸入中断
・吸入薬、内服薬が手元にない、不足
・屋内外での粉塵吸入
・受け入れ病院不足
・栄養状態の悪化
・睡眠不足
・活動量低下
・不安

主に呼吸器症状において被災時に留意しておきたいことについて、以下も参考にしていただければと思います。

・薬剤の携行
救急薬が支給されることがありますが個人の病状に合った処方が適わず、発作を起こすこともあります(短時間作動型β2刺激薬など)。必要な薬剤が手元に不足している場合は、地域の相談窓口や主治医、かかりつけ医、病院にご相談ください。
事前対策としては、医療記録が消失しすぐに適切な処方ができないこともありますので、できるだけ十分な薬剤の携行ができると望ましいでしょう(吸入器、携帯可ネブライザなど)。
また使用している薬剤名や量は思い出せるようにしておきましょう。

・ホコリ、ダニ対策
マスク着用。
ホコリが立たないように、床を濡れた雑巾などで拭く。
建物の崩壊に伴い、粉塵にはカビ、細菌、アスベスト(特に1980年代前半までの建物)、シリカなどが含まれる場合があるため、特に粉塵が立ちやすい解体撤去作業場にはできるだけ近づかないようにします。
また水害時には、ゴミ、廃材、油、ガス、薬品や病害性微生物など様々な有害物質を含む汚泥、ヘドロが乾燥した粉塵や汚れた海水を吸い込むことで肺炎、呼吸器障害を起こすこともありますので、できるだけ吸い込まないようにします。
自宅や避難所において屋外を歩いたヘドロ・汚泥の付いた靴のまま玄関や室内に入らないようにすることでも、居室内の乾燥したヘドロ・汚泥の粉塵量を減らすことにつながります。

・ホコリっぽい環境下での酸素吸入
酸素吸入中でも上からマスクをゆるく着用することが望ましい。

・吸入ステロイド薬がない、足りない場合、
吸入ステロイド薬の残量がわずかな場合、手元にない場合は、受診できるように避難先関係者に相談する。

・免疫抑制剤、ステロイドを服用している場合
感染症にかかりやすくなっているため、風邪やインフルエンザなどの感染症予防のためにも、マスク着用、うがい手洗いにつとめ、できる限りストレスを避けて、睡眠栄養をとって体力を落とさないようにします。

・カビ対策
適度な換気も心がけたいですが、咳が続きドロっとした膿性で黄色あるいは褐色の痰が出るようになった場合は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症など気管支喘息以外の疾患による可能性があります。もともと気管支喘息に罹患している方において、より発症リスクがあるとの意見もありますので、見逃さないようにし受診できるようにします。


マイクロエリート コンプレッサーネブライザ(コンプレッサー式):パルミコートなど
メッシュ式ネブライザ NE-U22(メッシュ式):メプチン、ビソルボンなど

出展・参考:東日本大震災被災地域の皆様へ呼吸器に関するQ&A
東日本大震災から学ぶ内科疾患~特徴,対応,予防~呼吸器疾患
東日本大震災における呼吸器診療の実際と課題

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