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ビールに不調になる要因とは?~大麦によるアレルギー反応や他には

2016.08.15

投稿者
クミタス

ビールには、アルコール、大麦、ホップそして香り成分である酢酸エチル、酢酸イソアミル、カプロン酸エチルなどのエステル成分などが含まれ、これらの成分に反応する可能性はありますが、アレルギー、アレルギー様症状が起こる場合、以下などが原因となる可能性があります。
・アルコール自体による反応
・大麦、大麦麦芽による反応
・酵母による反応
・ホップによる反応
・その他含有成分による反応

アルコールは肝臓で主にアルコール脱水酵素により代謝され、アセトアルデヒドに分解されます。そしてさらにアセトアルデヒドはアルデヒド脱水酵素により酢酸に分解されます。
このアルデヒド脱水酵素には1型アルデヒド脱水素酵素と2型アルデヒド脱水素酵素があり、日本人の4~5割ほどは2型アルデヒド脱水素酵素が遺伝的な変異により、活性が低い、あるいは活性していないと言われており、低活性、不活性の場合、アセトアルデヒドの血中濃度が上昇します。
頭痛、眠気、吐気といったいわゆるお酒に弱い方の悪酔いを引き起こすアセトアルデヒドは、肥満細胞や好塩基球を脱顆粒をさせ、ヒスタミンを放出しやすくします。ヒスタミンは炎症症状を引き起こし、鼻腔ではくしゃみや鼻水、鼻づまり、痒み、気管支では気管支収縮に関与するなど喘息症状、皮膚では浮腫、紅潮、湿疹といった反応を誘発するとみられています。
そのためビールに限らず飲酒後に炎症反応が起こる場合は、2型アルデヒド脱水素酵素活性低下、欠落が関与している可能性があります。

大麦による反応


一部の地ビールなどに六条大麦が使用されていますが、ビールに使用される大麦は主に二条大麦になり、日本、ドイツなどでの主な発酵方法である下面発酵、イギリスなどでの上面発酵、また自然発酵といった発酵方法による違いはありますが、主要タンパク質は同様で、大麦に反応している場合、以下タンパク質などがアレルゲンとなる可能性があります。
・プロフィリン(Hor v 12)
・α-アミラーゼ/トリプシンインヒビター(Hor v 15)
・α-アミラーゼ(Hor v 16)
・β-アミラーゼ(Hor v 17)
・ホルディン(Hor v 20)
小麦の主要アレルゲンタンパク質であるω-5グリアジンとの交差反応性があるとも考えられています。
・脂質輸送タンパク質 LTP(Hor v 14)
ビールの泡形成、安定性に関与。諸論ありますが96℃付近で変性が見られるとの示唆もあります。

小麦は含まれるタンパク質のグリアジンとグルテニンから形成されますが、大麦においてはホルディンがグリアジンに似たタンパク質となりグルテンを形成します。ビール中のグルテン量は、生の麦芽(モルト)に比べると3桁低いとの記述があり、ビール中には少なくなります。

脂質輸送タンパク質は、1gあたりでは麦味噌には18.3μg(0.0000183g)、ビールには麦みその15%弱になる2.6μg(0.0000026g)含まれているとの試験結果もあります。
まとまった量のビールを摂取することになると、症状出現に至りやすくなります。
大麦のタンパク質にアレルギー反応を示す場合、目や唇の周りの皮膚に発疹、顔や唇、まぶたなどに浮腫がおこる血管浮腫などが出現する可能性があります。息苦しさを感じるような気道の浮腫がある場合は速やかに受診するようにします。

ほかの含有成分による反応可能性


最終製品において残留酵母もフィルターなどで除去されているビールが多いですが、ごく微量に残留するものがある可能性、またビール酵母を除去しない特徴のビールもあり、小麦麦芽、小麦が使用されるビール、オレンジ、コリアンダーなどが含まれるビールもあります。

日本製のビール・ビールテイスト飲料では米、コーン、スターチ(でん粉)が使用されているものも多くありますが、発泡酒、第三のビールではなくビールにおいて米、とうもろこし、こうりやん、ばれいしょ、でんぷん、糖類又は財務省令で定める苦味料若しくは着色料(カラメル)は副原料として使用しても良いことになっており、これらを使用している商品もあります。
また、キャリーオーバー(※1)、加工助剤(※2)として、表示されていないけれど使用されている可能性がある成分として、二酸化硫黄、硫酸カルシウム、タンニン酸などがあります。

残留物、添加物にどの程度反応可能性があるかは、まだわかっていない面もありますが、副原料も確認の上、原因可能性を特定しやすくするうえでは、ほかの食品でも反応を示すものがあれば、食品摂取時の反応を記録できるのが望ましいでしょう。

(※1)
キャリーオーバー:原材料に対して使用が認められている食品添加物において、その使用量が原材料内での許可最大量を超えず、その原材料を使用して製造される食品には使用されずに、食品効果を発揮するに必要な量より有意に少ない場合、表示が免除になります。
(※2)
加工助剤:食品の加工の際に使用されますが、完成前に除去されるもの、その食品に通常含まれる成分に変えられその量を明らかに増加されるものではないもの、食品に含まれる量が少なくその成分による影響を食品に及ぼさないものについては、表示が免除になります。

出展・参考:allergen 「Barley」 Thermo scientific
allergen 「Malt」 Thermo scientific
大麦 Lipid Transfer Protein に対するモノクローナル抗体を用いたビールの品質管理評価系の確立 岡﨑 史子2013

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