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母乳に関するトピックス~低亜鉛母乳による乳児亜鉛欠乏症

2016.08.05

投稿者
クミタス

8月1日~7日はユニセフとWHO(世界保健機関)が定めた世界母乳育児週間でもあります。母乳育児への関心を高めるための一週間でもあり、生後6カ月まで完全母乳育児を推奨しています。
世界平均では生後6カ月間を母乳のみで育てられている赤ちゃんは4割ほどとも言われていますが、完全母乳栄養において場合により栄養補充が必要となるケースについて、母乳に関する最近のトピックスからお送りします。

母乳中の亜鉛濃度が低くなるケース


母体の血液中の亜鉛濃度は正常でも、母乳中の亜鉛濃度が低く、完全母乳栄養の乳児において、一過性の乳児亜鉛欠乏症に陥ることがあります。

特に低体重児や早産児において、乳児期に十分な栄養摂取ができず、亜鉛が欠乏すると、顔面の紅斑、四肢など全身の発疹(水疱、膿疱が伴うなど)、皮膚炎、脱毛、下痢の出現、成長遅延の懸念が出てきます。

さて、なぜ母体血液中の亜鉛濃度は正常でも母乳中の亜鉛濃度が低いのでしょうか?

母体の乳腺において、母乳へ亜鉛を分泌する亜鉛トランスポーターZnT2(SLC30A2) 遺伝子の変異が影響していることが示唆されており、亜鉛トランスポーターZnT2遺伝子変異が起こっていると、母乳へ正常に亜鉛が分泌されなくなり、母乳中の亜鉛濃度が低下することがわかってきました。

しかし遺伝子変異などが理由で母乳中の亜鉛濃度が低い場合は、母乳栄養を継続の上で、早期に亜鉛含有の人工乳を追加するなど、亜鉛を別途摂取することで、発疹など皮膚障害は7日前後などで軽快している報告が見られています。

遺伝子変異以外にも母体の状態によっては、完全母乳育児においても不足する栄養があることがあります。不足する栄養素を補充することで軽快することもありますので、乳児の皮膚や消化状況に違和感や問題が続くようであれば、早めに相談できるのが望ましいでしょう。また不足しないようにと過剰摂取しすぎないことにも配慮しましょう。


出展・参考:低亜鉛母乳により後天性亜鉛欠乏症を生じた極低出生体重児の 1 例
低亜鉛母乳による亜鉛欠乏症 臨床皮膚科
低亜鉛母乳による乳児亜鉛欠乏症、国内で予測より数多く発生していることを示唆

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