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日光照射におけるビタミンD生成と皮膚への影響面とのバランス

2016.05.17

投稿者
クミタス


短期的なビタミンD補充は、学童における喘息コントロールのレベルを向上し得る
Improved control of childhood asthma with low-dose, short-term vitamin D supplementation: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial
妊娠中や乳児期のビタミンD補充は、18カ月時でダニに感作する小児の割合を減らし得る
Vitamin D supplementation during pregnancy and infancy reduces aeroallergen sensitization: a randomized controlled trial
1歳未満の保育所入所を考慮した多重ロジスティック回帰分析では血清ビタミンDと各アレルギー疾患における関連は認められなかった(調整オッズ比;欠乏群:喘息1.06,鼻結膜炎0.85,湿疹0.84,全体0.73,低下群:喘息1.22,鼻結膜炎0.80,湿疹0.83,全体0.93:出典/日本の小学生における血清ビタミンD値とアレルギー疾患有病率の関連性)、との調査結果や、
アトピー性皮膚炎の乳児24例において血液(血清)を調べたところ、血清総IgE値(R=0.29,P=0.167),血清卵白特異IgE値(R=0.37,P=0.070)とは有意な相関はなかったが、乳児アトピー性皮膚炎の重症度と血清ビタミンD濃度は逆相関(血清ビタミンD濃度が低いほど乳児アトピー性皮膚炎が重症)していた(出典:乳児アトピー性皮膚炎における血清ビタミンD値の検討)
などがあり、など、アレルギー性疾患とビタミンD摂取との関係に関する報告は幾つかありますが、実際にビタミンDがアレルギー疾患発症の予防になり得るかは諸論あるところでもあります。

一方で、卵、乳、小麦、魚など多くの食物除去をしている場合、ビタミンD欠乏性のくる病発症の懸念もあり(参考:食物制限により発症したと思われるビタミンD欠乏性くる病の1男児例)、必要最小限の除去とともに、バランスよい食事からのビタミンDを含む様々な栄養摂取が望ましいところです。

ビタミンDは、皮膚への日光照射によっても体内生成されると考えられていますが、日照による紫外線曝露も気になるところでもあります。実際にはどの程度の日照が、紫外線曝露リスクが少なくビタミンD生成にも有効となり得るのでしょうか?

ビタミンD生成と照射リスクとのバランスを鑑みた際の、望ましい日照時間として以下調査報告があります。

日本人に多いスキンタイプの人が、顔と両手の甲の面積に相当する600cm2を露出させたときに、10μgのビタミンDを晴天日に生成するのに必要な日光照射時間は、
7月の9時で札幌14分、つくば11分、那覇16分
7月の12時で札幌8分、つくば6分、那覇5分
7月の15時で札幌24分、つくば18分、那覇10分
12月の12時で札幌139分、つくば41分、那覇14分

皮膚に直接的な影響が出始める日照時間
7月の9時で札幌39分、つくば32分、那覇46分
7月の12時で札幌25分、つくば20分、那覇16分
7月の15時で札幌64分、つくば52分、那覇29分
12月の12時で札幌227分、つくば98分、那覇42分

となり、10μgのビタミンDを晴天日に生成するのに必要な日光照射時間は、皮膚に直接的な影響が出始める時間よりも短く、10μgのビタミンD生成を日光照射でおこなう範囲では、皮膚への直接的な障害をもたらす危険性は低いと伺える内容とも言えます。
ビタミンDの1日の摂取目安量は、1~2歳で2μg、6~7歳で3μg、10~11歳で4.5μg、15~17歳で6.0μg、18歳以上で5.5μg、妊娠中の方で7.0μg、授乳中の方で8.0μgとなっていますので(日本人の食事摂取基準(2015年版))、600cm2の皮膚を露出させたときに、10μgのビタミンDを晴天日に生成するのに必要な日光照射時間は、理論上、ビタミンDの1日必要目安量を上回っていると言え、皮膚に直接的な影響が出る範囲より下回っているということになります。
出典:参考:太陽紫外線による健康のためのビタミンD生成と皮膚への有害性評価-国内5地点におけるビタミンD生成・紅斑紫外線量準リアルタイム情報の提供開始-

ビタミンDは取り入れるだけ良いという栄養素ではなく、サプリメント摂取などで過剰症になる場合もあります。過剰症の状態では、食欲不振、嘔吐、多尿、口の渇き、昏睡といった症状として現れることがあり、腎不全による尿毒症リスク、また心疾患リスクを挙げる報告もありますので、バランス良い食事、適度な外出を心がけましょう。

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