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スギ舌下免疫療法について~スギ花粉

2016.04.27

投稿者
クミタス

抗原(アレルゲン)を舌下で摂取して免疫寛容を誘導し、アレルギー症状出現が起こらないようにしていく舌下免疫療法として以下があります。
スギ花粉症:シダトレン
ダニアレルギーによる鼻炎:ミティキュア、アシテア

スギ舌下免疫療法はスギ花粉に皮膚反応または特異的IgE抗体反応が陽性である方などで重症の気管支喘息患者でないなど禁忌該当のない適応のある方を対象に、スギ花粉時期の1月~5月を除く月が開始時期になります。

スギ舌下免疫療法は、効果が出るまで8週間かかるとの意見があり、2年間継続して行うことでの治療効果が報告されています。スギ花粉以外の花粉においても複数の花粉でも有効な場合があるとの意見もありますが、スギ花粉以外の花粉、ダニ、食物などに対しても特異的IgE抗体価が高い方においては効果的でない可能性はあります。

舌下免疫療法における効果としては、アレルギー性鼻炎以外に、アレルギー性結膜炎の症状改善も挙げられています。ほかに、アレルギー性鼻炎の症状が軽快することで、喘息の発症を抑制することがあるとの意見もあります。
舌下免疫療法の副反応発生率は3~8%、そのうち全体の70%程度が開始後1か月以内に発現しており、重篤な症状の兆候として腹部症状があることがあり、舌下免疫療法後にアナフィラキシー出現があった方として気管支喘息のある方の報告がみられ、また中にはラテックスアレルギーのある方での報告があります。

スギ花粉症の患者さんの75%はヒノキの花粉にも反応があるとの報告があるように、合併する方が比較的多くみられますが、他の花粉にも有効な可能性はあるものの、ヒノキ花粉症合併のスギ花粉症の方に舌下免疫療法を行った55例においては、全体の評価として有意にヒノキ花粉への症状改善が見られたとは言えない報告もあります(参考:スギ花粉症に対する舌下免疫療法のヒノキ花粉症への効果)。

また、ブタクサ花粉の舌下免疫療法(POLLINEX® Quattro Birch)、そして舌下に薬剤を置くタイプではありませんが、口腔内の粘膜からの免疫療法(OMIT)として、アレルゲンが調合された歯磨き粉をブラッシングでアレルゲン吸収する方法も海外では試験がおこなわれているようです(Oral mucosal immunotherapy for allergic rhinitis: A pilot study)。

免疫療法のPFASへの効果は?


上部でも記述しましたが、スギ花粉症の方ではほかの花粉症の合併があることがあります。
・スギ花粉症の患者さんの75%はヒノキの花粉にも反応
specific IgE to Japanese cypress (Chamaecyparis obtusa) in patients with nasal allergy
・スギ花粉症の半数がカモガヤ花粉症を合併
参考:萩野敏也 耳鼻臨床94(12)2001
・スギ花粉症の方の約20%が、ブナ目のハンノキに抗原感作
出典・参考:アレルギーの領域 5 (6)761-765.1998
・スギ花粉症におけるOAS(PFAS)合併の頻度は、シラカバ花粉症におけるOAS(PFAS)合併の頻度と比べると低く7~16%
出典・参考:アレルギー 45(8・9), 1028, 1996-09-30、アレルギー 47

スギ花粉にアレルギー症状がある方において、交差反応性のある食物としてはトマトが挙げられ、トマトにアレルギー症状がある(PFAS:花粉関連食物アレルギー症候群(Pollen-associated food allergy syndrome)。OAS(口腔アレルギー症候群)は口腔咽頭を中心とした症状)場合がありますが、交差反応性のある果物、野菜にアレルギー症状がある場合があります。

交差反応性のある主な食物
・ハンノキ花粉:バラ科(リンゴ、桃、チェリー、梨、洋梨、びわ、いちご)、マタタビ科(キウイ)、セリ科(ニンジン、セロリ)、ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ)、ナス科(トマト、じゃがいも)、大豆、ミカン科(オレンジ)、ウルシ科(マンゴー)、キク科(ゴボウ)、ヤマイモ、ヘーゼルナッツ

・シラカバ花粉:バラ科(リンゴ、桃、チェリー、梨、洋梨、いちご、スモモ、杏、アーモンド)、マタタビ科(キウイ)、セリ科(ニンジン、セロリ、コリアンダー)、ウリ科(メロン)、ナス科(じゃがいも、パプリカ、トウガラシ)、大豆、ミカン科(オレンジ)、ムクロジ科(ライチ)、ピーナッツ、クルミ、ココナッツ、ヘーゼルナッツ、マスタード

・イネ科(カモガヤ花粉、オオアワガエリ花粉):ウリ科(カボチャ、キュウリ、ゴーヤ、ズッキーニ、トウガン、ハヤトウリ、ヘチマ、スイカ、メロン)、トマト、オレンジ、バナナ、アボカド

PFAS(OAS)に対する交差反応性がある花粉の免疫療法は、現時点では標準療法としては推奨されていませんが、花粉への免疫療法を実施したところ、果物、野菜への症状が改善した例も含めた症例報告もなされています。
症例1:15歳女児,シラカバ・スギ・ブタクサ花粉
症例2:7歳女児,シラカバ・スギ・ブタクサ花粉
症例3:15歳男児,シラカバ・スギ花粉・ハウスダスト
症例4:13歳女児,シラカバ・スギ花粉・ダニ
症例5:12歳男児,シラカバ・スギ花粉・HD
それぞれ急速皮下注射免疫療法(rush SCIT)を実施したところ、症例1は維持量到達直後からOASが改善、症例2~4は維持量到達数ヶ月後から症状の改善を自覚しており実際に食べることができる果物が増えている、症例5は現在実施中。
(出典:OASを伴う季節性アレルギー性鼻炎に対してシラカバ花粉免疫療法を実施した5例の検討 神奈川県立こども医療センターアレルギー科ほか 第25回日本アレルギー学会春季臨床大会 2013年5月にて報告)
シラカバ花粉への免疫療法により、リンゴ摂取量が1.5gから50g以上に増加するなど、効果がある可能性はあります。
花粉への免疫療法が花粉に交差反応性のある食物へのPFSに有効であるかは結論段階ではありませんが、今後の試験結果や検討等によってはPFAS対策としての使用が広がる可能性もあるのかもしれません。

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