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抗ヒスタミン薬の違い、特性

2016.04.22

投稿者
クミタス

アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの症状のある方で、抗ヒスタミン薬を服用したことがある方は多くいらっしゃるかと思います。

ヒスタミンがヒスタミンH1受容体と結びつくことでくしゃみや鼻水などのアレルギー症状を引き起こしますが、抗ヒスタミン薬はその結びつきをブロックすることで、鼻水や痒みを止める働きを示します。しかし薬剤によって血液脳関門を通過して眠気、認知機能障害(自覚なく集中力・判断力や勉学・労働能率が低下することでインペアード・パフォーマンスと呼ばれます)といった中枢抑制作用、口渇、尿閉、眼圧上昇などをもたらす抗コリン作用を示す可能性がより高くなるものもあります。

抗ヒスタミン薬のこれらの作用は、薬剤の脳への移行が高いと出現リスクが高くなるとも考えられ、ほかに幼児の急性脳症、痙攣発作誘発の懸念が指摘されており、動物実験においては、脳内H1受容体占拠率の高い抗ヒスタミン薬は、使用量の増加とともに痙攣の持続時間が長くなったという報告もあります。
また、抗コリン作用のある薬を3年以上など長期服用することにより、主に高齢者において認知症、アルツハイマー病発症のリスクが高まる可能性を挙げる意見もあります。
脳への移行程度を見るうえで、PETを用いて測定した脳内H1受容体占拠率(血液脳関門通過率と脳内H1受容体への結合率の総和により決定)があります。

■各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率
(文献により数値差はあります)
脳内H1受容体占拠率が高いほど、脳への移行率が高いことを意味し、眠気、認知機能障害、痙攣などのリスクに影響する可能性があります。

クロルフェニラミン(ポララミン) 第1世代
1日量2~8mg
5㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約85%

ケトチフェン(ザジテン)第2世代
1日量2mg
1㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約80%

ジフェンヒドラミン(レスタミン、ドリエル)第1世代
1日量60~150mg
30㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約55%

オキサトミド(セルテクト)第2世代
1日量60mg
30㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約52%

メキタジン(ニポラジン、ゼスラン) 第1世代
1日量6~12mg
3㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約23%

アゼラスチン(アゼプチン) 第2世代
1日量2~4mg
1㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約21%

オロバタジン(アレロック) 第2世代
1日量10mg
5㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約15%

セチリジン(ジルテック)第2世代
1日量10~20mg
10㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約14%

エバスチン(エバステル)第2世代
1日量5~10mg
10㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約15%

エビナスチン(アレジオン)第2世代
1日量10~20mg
20㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約10%

レボセチリジン(ザイザル)第2世代
脳内H1受容体占拠率 約8%との記述も

フェキソフェナジン(アレグラ)第2世代
1日量120mg
120㎎でのPET試験で脳内H1受容体占拠率 約2%
親水性が高く分子量が大きいため血液脳関門を通過しにくく脳への移行が少ないと考えられています。

出典・参考:
抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率と鎮静作用
市販されている抗ヒスタミン薬のヒト脳内ヒスタミンH1受容体占拠率
抗アレルギー薬のヒスタミンH1拮抗作用とインペアード・パフォーマンス

授乳中、幼児、高齢者、運転時の抗ヒスタミン薬


アレグラ、クラリチンは授乳中のママにおいても安全に使用できると思われる薬とされています(参照:国立成育医療センターWEBサイト)。

ザジテン(シロップ、ドライシロップ)、ザイザル(シロップ)、アレグラ(ドライシロップ)は6カ月以降からの適応、
アレジオン(ドライシロップ)、ニポラジン(細粒・シロップ)、ゼスラン(細粒・シロップ)は1歳以降からの適応、
ジルテック(ドライシロップ)、アレロック(顆粒)は2歳以降からの適応、
クラリチン(ドライシロップ)は3歳以降からの適応、
になっていますが、脳への移行による痙攣リスクを鑑みると、この中の薬剤でも脳内H1受容体占拠率が高い薬剤は、選択する理由がない限りは第一選択となる場合は相談されるのが良いかもしれません。

高齢者には脳への移行が少ないアレグラ、アレジオンが望ましいとの意見があり、車の運転等に関する注意記載のない抗ヒスタミン薬としては、アレグラ、クラリチンが挙げられます。

上記はあくまで現時点での調査結果、意見、評価、可能性についてであり、脳内H1受容体占拠率だけが着目点、事由ではありませんが、服用中に痙攣等違和感等が生じた場合はすぐに受診の上、相談ください。

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