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〔食中毒〕腸管出血性大腸菌O157感染と溶血性尿毒症症候群(HUS)

2016.04.04

投稿者
クミタス


下痢症状がおさまり軽快することもある一方、O157感染によりベロ毒素(2型は1型より重症)が産生されることがありますが、以下併発する重症例があります。

溶血性尿毒症症候群(HUS)
中枢神経障害(痙攣、意識障害)
血小板減少、貧血
膀胱傷害、腎機能障害
脳症
高血圧

溶血性尿毒症症候群(HUS)は溶血性貧血、血小板減少、腎機能障害を主としますが、HUS発症以外にもO157感染により併発する症状が悪化することで、10年、20年を経て死亡する場合もあります。傾向として溶血性尿毒症症候群(HUS)発症は5歳くらいまでの幼児に多いですが、成人に発症することもあり、男女別では女性に多くみられるとの報告があります。

感染経路


食品由来の場合、家庭もですが、飲食店(主に焼肉店)、学校給食、老人ホームや旅館の食事、仕出屋の弁当での感染が多い例となります。

直接感染(主な感染源)
生肉(牛肉)
キュウリの浅漬け
井戸水、地下水
生野菜(洗浄が不十分、糞を肥料にしている場合含む)
汚染した調理器具、皿

牛肉においては、と畜場搬入牛のうち、5~12月は10%を超え、特に6~9 月の夏期には約20%(2004年)、黒毛和種においても16.8%はO157保菌牛と報告されています。

二次感染
患者さんの便に含まれる菌を手などを介して経口摂取。
空気感染は起さないとみられていますが、ヒト⇒ヒト感染が起こり得ることで、家庭内での感染などさらに感染規模が拡大しやすくなります。

出典・参考:食品健康影響評価のためのリスクプロファイル 食品安全委員会 2010年4月

重症化予防


同じ食事をしていても重症化しない方、またO157感染をしていても無症状の健康保菌者もいます。しかしながら健康保菌者による調理により、第三者に感染をもたらすこともあり、無症状であっても自らが拡散者となり得る自覚も必要です。

マウスでの研究ですが、果糖を効率よく利用でき酢酸を産生するビフィズス菌株によっては病原性大腸菌 O157感染を起こした場合も、大腸粘膜上皮を保護する役割をもたらすのでは、との報告(出典:ビフィズス菌の作る酢酸がO157感染を抑止することを発見-善玉菌(プロバイオティクス)の作用機構の一端を解明-)もあります。

また、病原性の高い腸管出血性大腸菌が持つ一酸化窒素還元酵素が、病原菌を殺菌するのに重要な役割を果たす一酸化窒素を分解してしまうことで重症化し、一酸化窒素が低下すると、大腸菌が病原性の高いベロ毒素2を新たに生み出しやすくするとの研究報告がなされており(千葉大大学院医学研究院 野田公俊教授、清水健准教授ら)、重症化予防につながる可能性があります。

下痢症状が無くなった後でも、排菌はしばらく続き、5歳以下の幼児で発症後17日間排菌が認められたとの報告もありますので、家庭内での感染予防においても、症状が無くなった後も続けられると尚良いでしょう。

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