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ベビーオイルの選択~皮膚バリア機能に与えるオイルの影響

2016.10.04

投稿者
クミタス

ベビーオイルは各国で使用されており、アメリカではピーナッツオイルなど、イギリスではヒマワリ油、オリーブオイル、日本ではごま油、オリーブオイルなども使用されています。

ベビーオイルを選ぶ際、植物由来のオイルは皮膚に優しい、健康的、とポジティブな印象を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、皮膚にピーナッツオイルを使用することは、皮膚経由でピーナッツに感作する可能性があり、皮膚バリア機能が発達途上の乳幼児期や擦り傷など皮膚トラブルのある方においては、将来的にピーナッツアレルギーの発症リスクを高める可能性についての見解は以前から示されています。

Scientific Committee on Consumer Safety OPINION ON peanut oil(sensitisation only) 
https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/consumer_safety/docs/sccs_o_155.pdf

ピーナッツオイルを含むスキンケア製品を使用するグループでピーナッツアレルギーの発症が多い
Lack G, et al : Factors associated with the development of peanut allergy in childhood. N Engl J Med 348: 977―985,2003.

マンチェスター大学の研究では、115人の赤ちゃんを、①オリーブ油1日2回数滴28日間使用群、②ヒマワリ油1日2回数滴28日間使用群、③オイルを使用しない群の3群に分けて、皮膚の状態を調査した結果、③オイルを使用しない群に比べ①②は角質層への水分補給はより高かったが、ラメラ(細胞間脂質)構造の発達を劣らせており、経表皮水分喪失、pH、皮膚紅斑においては差がなかった、と報告しています。
Olive Oil, Sunflower Oil or no Oil for Baby Dry Skin or Massage: A Pilot, Assessor-blinded, Randomized Controlled Trial (the Oil in Baby SkincaRE [OBSeRvE] Study) 2015.11

成人においてのオリーブオイル、ヒマワリ油に関する研究では、1日2回前腕にオイル6滴を28日使用で、アトピー性皮膚炎の既往歴の有無を問わずオリーブオイルの方が、軽度の紅斑を誘発しており、皮膚バリア機能へのダメージが見られた。アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があり、オイルによってダメージ差があることを示唆している報告もあります。
Effect of olive and sunflower seed oil on the adult skin barrier: implications for neonatal skin care.

低出生体重未熟児において、皮膚バリア機能の発達にヒマワリ油がどう影響しているか、についての調査では、ヒマワリ油が低出生体重未熟児の皮膚バリア機能の発達を遅らせる可能性を示唆しています。
Influence of sunflower seed oil on the skin barrier function of preterm infants: a randomized controlled trial.

オイルの種類や精製程度にも依りますが、新生児において、ラメラ(細胞間脂質)構造の発達が十分でない状態であったり、発達が遅延することで、皮膚バリア機能が十分に働かない状態でいることは、オイルに含有する成分やその他の物質も体内に吸収しやすくなる状態とも言えます。

皮膚バリア機能にフィラグリン遺伝子変異があると皮膚からのアレルゲン感作を介し、喘息発症リスクが高まるとの示唆も成されていますが、皮膚バリア機能が十分に機能していない場合、皮膚障害をおこし吸収する成分によっては経皮感作によりアレルギー反応を起こす可能性があり、また塗布過程で皮膚のバリア機能を低下させ、発疹、紅斑などが見られるようになることもあります。

使用している方すべてにおいて感作、発症するわけではありませんが、食物として摂取する成分を含むオイルを皮膚に塗布することは、経皮感作を機に、その成分を経口摂取した際にその成分にアレルギー症状の出現リスク可能性もあることも踏まえ、スキンケアができるのが望ましいでしょう。

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