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汗とアトピー性皮膚炎〜悪化要因とその対策〜

2016.02.09

投稿者
クミタス

汗とアトピー性皮膚炎との関係、対策について、アレルギーの診療に関わる医師の方にお話しをうかがいました。

大阪府済生会中津病院 小児科、免疫・アレルギーセンター
平口 雪子先生

略歴~
平成18年7月 独立行政法人国立病院機構三重病院 小児科 医員
平成20年7月~ 大阪府済生会中津病院 小児科、免疫・アレルギーセンター 医員
現在も臨床医としての仕事の傍ら、独立行政法人国立病院機構三重病院臨床研究部の研究員として好酸球機能に関する基礎研究を継続。

アトピー性皮膚炎の基本治療


アトピー性皮膚炎は強いかゆみのある湿疹ができ良くなったり悪くなったりを繰り返す病気で,乳幼児期にも多く発症します。治療の基本は1)発症・悪化要因の検索と対策,2)皮膚機能異常の補正(スキンケア),3)薬物療法(ステロイド外用薬,タクロリムス軟膏など)の3点です。

アトピー性皮膚炎の発症・悪化要因


アトピー性皮膚炎には様々な発症・悪化要因があります.各要因の影響の大きさは患者さんごとに異なり,年齢によっても変わっていきますので,自分の悪化要因をそれぞれに探していくことが大切です。
主な要因として小児期前半では食物,汗,乾燥,掻き壊し、物理的刺激(よだれ,石けん,洗剤,衣服のこすれなど)、環境(ダニや室内塵,花粉,ペットの毛など)、細菌・真菌など,小児期後半から成人期では、汗、乾燥、掻き壊し、物理的刺激、細菌・真菌、環境、ストレスなどがあります。ほとんどの方で複数の要因が症状の悪化に関わっています.

食物の影響と対策


乳児期のアトピー性皮膚炎ではしばしば食物アレルギーを合併し、原因食物の除去によって湿疹の改善を認めることがあります。適切なスキンケアや外用療法を行っても症状のコントロールが悪い場合は食物アレルギーの関与が疑われます。食物除去・負荷試験などで食物アレルギーの関与が確定すれば,皮膚炎の治療をしっかり行いながらその食品だけを除去します。心配だからといった理由で広範囲に除去するのではなく、必要最小限の除去にとどめるよう注意しましょう。
食物の影響は年齢が大きくなるにつれ次第になくなり、学童期以降では食物摂取で即時型症状を残すことはあってもアトピー性皮膚炎の症状が悪化することはほとんどなくなります。成長に応じて除去の必要性を見直し、漫然と続けないようにします.

汗の影響と対策


アトピー性皮膚炎では汗のたまりやすい部位(肘の内側、膝の裏、顔面、首など)に湿疹ができやすく、汗は特に重要な悪化要因といえます。汗は皮膚を刺激してかゆみを起こす原因になり、そのままにしておくとアカやほこりなどの汚れと混じり合い皮膚により強い刺激を与えてしまいます。
 
さらにアトピー性皮膚炎の方は汗アレルゲンに対してアレルギー反応を示す方が約8割もいるという報告もあり、自分の汗に過敏に反応して皮膚症状が悪化するとも言われてきました。
最近、この汗アレルゲンの正体は健常人の皮膚表面に常在するカビの一種マラセチア属真菌のM. globosaが産生するMGL_1304というタンパク質である事が分かりました(J Allergy Clin Immunol. 2013 Sep;132(3):608-615.e4.)。
このタンパク質はアトピー性皮膚炎患者血液中のIgE抗体と結合し,また好塩基球からはヒスタミン遊離を起こすなど,これまで汗アレルギーの原因物質として想定されていた物質であることが証明されています.今後,汗アレルゲンを効率的に吸着したり不活化する製品の研究が進み,新しい治療やスキンケアの方法が開発されることが期待されています。汗アレルゲンにアレルギーを起こす体質があるかどうかは,ヒスタミン遊離試験 (HRT)という血液検査(保険適応)で調べることができます。
 
一方で汗をかくこと自体はアトピー性皮膚炎に良い影響を与えるとの報告もあります。そして汗をかいてもその後、汗を残さないようにケアすることが大切で、運動後や暑くて汗をかいた後はできるだけ早くシャワーを浴びて汗や汚れを洗い流すようするのが望ましいでしょう。とくにヒスタミン遊離試験で汗アレルゲンへの反応が陽性の場合は、まめにシャワーを浴びるなどを心がけるとよいです。首の周りや関節の内側、わきの下など汗がたまりやすい部分は特に念入りに洗います。石鹸を使った場合はすすぎ残しがないように注意しましょう。またシャワーの後は、乾燥対策として保湿剤を塗り直すなども忘れずに。学校などの設備の問題ですぐにシャワーで流せない時は、手足をできるだけ広範囲に洗ったり、柔らかいティッシュや濡れタオルで抑えるように汗を吸い取っておくとよいでしょう。

その他の要因と対策


小児期後半からは環境中のダニに影響を受ける方が増えてきます。ダニは温度20〜30℃,湿度が50〜70%の環境を好み、ほこり、カビ、食べ残しなどは繁殖の原因になります。アレルゲンとなるのはダニの死骸や糞にあるタンパク質です。生きたダニが増え続けるかぎり掃除でダニアレルゲンを減らすことは困難です。室内の湿度を50%以下に下げてダニの繁殖を抑えつつ掃除を行うことが効果的なダニ対策のポイントになります。湿度を低く保つにはこまめに換気し、室内干しや観葉植物を置かないようにします。掃除機をかける際には20秒/㎡の時間をかけて丁寧に行いましょう。ダニアレルゲンは水に溶けるため、寝具やぬいぐるみなど可能な物は丸洗いするとよいでしょう。

団体名 大阪府済生会中津病院 小児科、免疫・アレルギーセンター
住所 大阪市北区芝田2-10-39
連絡先 06-6372-0333
特徴 大阪府済生会中津病院では、小児アレルギー教室を開催しています。 https://www.nakatsu.saiseikai.or.jp/about/asthma_school/

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